骨格のしっかりしたライトノベルのお手本です

 雰囲気としてはちょっと前のラノベに近いかもしれない。少年向け娯楽小説として、きわめてよくできた作品である。大きなお世話かもしれないが、「漫画原作コンテスト」に応募すべき作品だったように感じた。

 ファンタジー世界で「竜」を狩る。一見よくある話のようだが、この小説で展開されるのは、ゲームじみた魔法戦でもなければ、主人公が無双するだけのお手軽バトルでもない。火薬と砲弾、そして何よりも超常の力を与えられた「竜人」が竜にぶつかっていく、熱い肉弾戦である。

 主人公・フランシスの素直で前向きなキャラクターにも好感が持てるが、何と言っても彼を取り巻く大人たちがいい。「いいオヤジ」が登場する作品には傑作が多い、というのが私の持論なのだが、この小説も例外ではなかった。

 同作者の別の長編にもレビューを書いたが、こちらはまた随分と違った作風で楽しめた。いろいろ書ける器用な作者だという印象。