たった一人、一騎討ちで竜を打倒する戦いもまた胸を熱くしてくれますが、しかしそれはほんの一握りの英雄にのみ許された蛮行。
個の力で群をねじ伏せる竜を、綿密な作戦とトラップ、そして卓越した部隊による軍事行動で凡庸な軍隊が打ち倒す様こそ、非力な人間だけが持つ力のように思えて、私は大好きです。
そこに、もちろん本作独自の超人部隊の活躍が欠かせませんが、しかし誰も彼もが一騎当千のごとく竜を倒せるわけではない。死の危険は圧倒的に付きまとっているのです。だからこそ、あらゆる手段を用いた作戦が求められ、それを遂行するために努力する様子が輝いているように思えます。
ファンタジーに欠かせないドラゴンとの戦いを全力で取り組む彼らの姿は、一見の価値ありだと思います!
レビュアーとしてもとてもお世話になっている作者さんの長編です。少年時代に憧れた冒険物語を思い出すような、そんな印象を持ちました。
この物語の舞台は、銃火器がある程度発達し、絶対王政的な国家体制が整った「近世」、そして巨大で強大な「竜」が跋扈する新大陸。この設定の上手さに感心させられます。
いわゆる「ヨーロッパ中世風」を謳うファンタジー作品で、なぜか国家常備軍や都市の治安を担う「騎士団」、中央集権的な官僚機構が登場して白けてしまう、というのはよくありがちな経験。
また、都市や村落の周辺に、モンスターやらドラゴンやらが定期的にポップするといったよくある展開も、「なんでわざわざそんな場所に住むんだ?」という突込みが避けられません。
この小説の設定の上手さは、こうした難点を上手く回避しているだけでなく、竜との戦いに、まるで目の前で繰り広げられているような現実感を与えています。バトル描写が本当に上手いです。
注意点として、主人公は途中で大きな壁にぶち当たりながらもそれを乗り越えて成長します。主人公が少しでも苦戦したり悩むような展開がお好きでない方は合わないかもです。逆に、こうした熱い展開が好みの読者にはお薦めです。
雰囲気としてはちょっと前のラノベに近いかもしれない。少年向け娯楽小説として、きわめてよくできた作品である。大きなお世話かもしれないが、「漫画原作コンテスト」に応募すべき作品だったように感じた。
ファンタジー世界で「竜」を狩る。一見よくある話のようだが、この小説で展開されるのは、ゲームじみた魔法戦でもなければ、主人公が無双するだけのお手軽バトルでもない。火薬と砲弾、そして何よりも超常の力を与えられた「竜人」が竜にぶつかっていく、熱い肉弾戦である。
主人公・フランシスの素直で前向きなキャラクターにも好感が持てるが、何と言っても彼を取り巻く大人たちがいい。「いいオヤジ」が登場する作品には傑作が多い、というのが私の持論なのだが、この小説も例外ではなかった。
同作者の別の長編にもレビューを書いたが、こちらはまた随分と違った作風で楽しめた。いろいろ書ける器用な作者だという印象。