最高の世界観

「赤ずきん事件」と合わせて読ませて頂きました。

この作品の魅力は何と言っても世界観です。全体に広がる暗く重い空気、昼でも空には厚い雲が立ち込め、活気を失い疑心に満ちた街は影を落とす――そんな中に散りばめられたファンタジックな要素が、モノクロの世界に色を与えています。それもがっつりと描写されているのではなく、それとなく示唆されているのがまた奥ゆかしい。

私はこの世界観が非常に好きです。
そしてだからこそ、もったいないとも思います。

この作品のフォーマットはミステリーのそれです。殺人が起きて、推理パートがあり、最後に解決する。解決の部分は作品全体からすると本当にごく一部で、そこにカタルシスが集約します。本作はそこに至るまでがちょっと長く感じます。ファンタジーなので、真面目に考えるだけ損という印象を受けてしまうのが一因かもしれません。そこがもったいないと、私は思いました。

で、無礼を承知で勝手な提案なのですが……「探偵ガリレオ」みたく、短編or中編連作にした方が良いと思うのです。もっとスチームパンク的なギミックも見てみたいし、話を読んでいくにつれて世界観が少しずつ明らかになると非常に素敵だと思います。主人公の人柄もそうだし、探偵助手に鉄の女だって――とにかくまだまだ掘り出せるはず!

というわけで、今後の期待を込めて星三つ。
お待ちしています!

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