この短い言葉に感想を告げてしまうのは楽しみ方を変えてしまうのではないか、と思う。だからレビューというのに綴る言葉をあまり持たない。ただ秀逸なショートショート、この感情を飲み込んでそう紹介したい。球体のように手のひらに乗る文字がどう見えるのか、それはきっと読み手のものだ。
短編小説、というよりも、ショートショートといったほうが良いくらいの短さの小説ですが、ぐっと来るものがありました。この話をどう受け取るか、人それぞれだと思いますが、私はぞっとするような、不気味さを覚えました。この長さでそれを表現できた作者のアイデアと描写力を尊敬します。
詳細を書きすぎると確信に関わってしまうので深くは語れませんが、一見職人技の賜物を褒め称えているような文章の裏で、どこか冷たく、強烈な風刺のようなものを感じてしまいました。まるで「工業製品」のように歪なものを顧客のニーズに合うように丸め、送り出す……確かにそれは一つの側面だけかもしれないですし、そうしないと顧客も満足しないのは仕方ないかもしれません。でも、これが「側面」である、という事実を、丸い球のような柔らかい文章で重く突きつけている……様々な事を考えさせられる、良い意味で独特な雰囲気に満ちた短編作品です。
球体工場というタイトルからは、それが何を作っている工場なのか分かりませんが、結末まで読み進めればきっと思うはず。ああ、私もこの工場の製品だ。ネタバレになってしまうので詳細は書けませんが、『それ』は洗脳と同義であると何かで読んだのを思い出しました。職人としてのやり甲斐と達成感の裏に、なんだか薄ら寒いものを感じる、巧みな短編です。
工場で働いている人こそかける作品だと思った。最後、作者の感情が高まる様子は何となく共感出来る点でもあった。
これが教育機関の比喩なら何ともやり切れないですが、職人技が要求される生産現場だと仮定すると、急にいい話に変わります。――違いは何かと少し考えましたが、要は相手の多様性・自由意志を認めるかどうかだけで、結局、判断する人の主観に左右されるようですね。短いながら深い話です。
教員をやっている身からして「ああ、そういう見方があったか」と思わせる作品でした。確かにありますね、尖ったり、ひび割れているものが。しかしそれを球体に近づけるのがこの工場のライン工の仕事です。手を抜くことなんてできませんね。感動しました。次の作品を楽しみにしています!
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