第9話洋食屋との死闘

ある日、僕らは事務所の社長がある洋食屋さんの店長と知り合い、

そこの洋食屋さんを貸し切りで、お笑いのライブに使わせてもらうことになった。


洋食屋さんとしては、お笑いのライブでお店に集客が期待でき、

事務所としては、無料でライブ会場を調達できたので、一石二鳥だった。


しかしそれは、上の人間の浅はかな考えで、僕ら売れてない芸人たちのライブで集客など、見込めるはずがなかった


当日そこの洋食屋さんに行くと、話がついているはずの店長がおらず、

そこの若い支配人しかいてかった。

この支配人にはうまく話が伝わってなかったようで、

「お笑いのライブ会場でうちの店を使う?しかも貸し切り?」

と、明らかに話を聞いていないという、不快な顔をした。

一応、そこの店長に電話で確認をしてもらい、しぶしぶ貸し切りでお店を使っていいことになった。


しかし、お笑いライブの開場の時間になっても、ライブのお客さんが誰一人として来ず、

さらに、そこの洋食屋さんで食事をしようと来たお客さんに、


「今日お笑いのライブがあるんです。」


と、言うと

「じゃあ、他の店で食事するわ。」

と、帰ってしまった。


お笑いのライブで1人もお客さんが来ず、逆にお店に食事に来た人を片っ端から追い返すような形になり、

そこの支配人がブチキレた。


「うちのお客さん、みんな帰ってしまっとるやないか!」


それでも僕らは事務所の命令で来ているので

、一歩も引けない。


「今日はお笑いライブでこの店を貸し切りにさせてもらってるので、何がなんでもさせてもらいます!」


ようやく、そのお店に食事をしに来て、

「ついでにお笑いライブも見ていいよ。」

という良心的な人、2、3人のみ集まった。

お笑いライブ単体での集客はゼロ。

たまたま食事に来た人をとっつかまえたような形になった。


洋食屋からしたら、たまったもんじゃない。

お客さんを普通に減らされて、お笑いライブでお店を貸し切りにされて、踏んだり蹴ったりだ。


なんとか、その日のライブは終わったが、

支配人が

「お前ら二度と来るんじゃねえ。」

みたいな顔をした。


僕らも少し腹が立ったので、後日プライベートでそこの洋食屋に腹いせのように、客として食べに行った。


「あんまし、美味くないやんけ!」


客として散々文句を言ってやった。


まさに、底辺。

お笑いの底辺と、洋食屋の底辺。

底辺どうしの人間たちの死闘である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

売れてない芸人あるある。 原田おさむ @osamu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ