第8話トイレ

当時僕は小さなお笑いの事務所に所属していました。

仕事はもちろんあまりありませんでしたが、コンテストに手堅く出れるという利点がありました。


お笑いといえば、吉本興業が一番大きな会社ですが、独占禁止法という法律もありまして、お笑いのコンテストにおいては、どの事務所も芸人が出場機会が与えられました。


吉本興業などの大きな事務所は、多数の芸人の中から選別されて、一部の芸人しかコンテストの予選すら出場できません。

しかし、小さなお笑い事務所は、もともと芸人が少ないので、すぐにコンテストの予選に出れました。


それが、小さなお笑い事務所の唯一の特権でもありました。


お笑いのコンテストの予選は、だいたい朝早くから夜まであり、予選会場では、百組近い出場者が、休憩をはさみながら、ほぼぶっ通しでお客さんの前でネタをします。


そのお客さんも、大きな事務所の芸人さんのファンの方々が多く、なかなか僕らみたいな知りもしない芸人には厳しいかったですが。


それでも多数の人にネタを見てもらえる機会でもありました。


しかーーし!

有名な人気のある芸人さんの出番以外は、会場が出入り自由なので、お客さんが興味のない芸人の出番のところで、


トイレに行くのです。


それも、1人2人じゃありません。

ごっそり 会場の半分くらいいなくなります!


そして、事件は起こりました。

予選の僕の出番の前までに、有名で人気のある芸人さんが続いており、

そして僕の出番、

司会者が僕を呼び込みます。


「次は、原田おさむさんです!」


そして、颯爽と僕が舞台に登場すると、


満潮から干潮に潮がひくように、

サーーーーッと、お客さんがトイレに立ち上がっていきました。

もう、席に座っている人の方が少ないくらいに!

サーーーーッと、みんな立ち上がって行きました。


思わず僕は舞台から叫んだ。


「今、そんなに、トイレ行ったら、個室いっぱいやで!!」


精一杯の僕の叫びに、会場は爆笑!

その笑いが、審査に反映されればな。

なんて、思いました。(^^;)


予選の結果?


それは、ご想像におまかせします。(^-^)


皆さん、トイレは休憩時間に行きましょう!


あと、有名な人気のある芸人さんほど、いつでもテレビで見れますから!


売れてない芸人さんほど、なかなか見れないから貴重なのですよ!!

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