第八話
「えっと、これでいい、のかな?」
旅団で目を覚ましてから二ヶ月ほどが過ぎ、簡単な会話が交わせるようになったハルトは、ラーナやラーナの姉であるチェシカと共にそういった裏方の仕事を教えてもらいはじめていた。
「うん、はじめてなのにとても上手に出来ているわ。最初は難しいかもしれないけれど、何度も作っていけば、すぐに覚えられるから大丈夫よ」
「うん、ハルトとーっても上手!」
優しく笑うチェシカとラーナに、ハルトは照れ臭そうに眉を下げて笑った。
「ありがとう。僕、もっとたくさん、えっと……やり直す?して、たくさん作れるようになるね」
「ハルト、やり直すじゃないよー!練習するだよ!」
「あ、そっか。練習する。だ、ありがとう、ラーナ」
「えへへ、どういたしまして」
にっこりとラーナと笑いあって、チェシカはそんな様子を微笑ましそうに眺めている。穏やかな時間が流れているこの旅団が、ハルトはとても好きになっていた。
「チェシカ姉さん、これで、この
「うーん、これで終わりじゃないの。この後は出来上がった物を集めて、ディガ湖の水に浸すの。そうすると、
「そうなんだ」
チェシカの答えを受けて、ハルトはそっと視線を伏せた。視線の先には黒い鱗が蔦のように這う自身の細腕。
ハルトの世話を焼いてくれている人々から教えてもらったそれらの事は、ハルト自身が
しかし、目覚めてからこれまでハルトは未だその姿を見た事が無く、その声を聞いた事もなかった。鱗はしっかりと腕に張り付いているというのに。
「だいじょーぶだよ。ハルト。ゆっくりでいいって、イビもガルドさんも、ルドも言ってたよ。見えなくても、聞こえなくても、ラーナと一緒だから怖くないよ」
ぽんぽん、と小さな手が、ハルトの頭を撫ぜる。きらきらと光る金の瞳に、ハルトは不安に蓋をしてにっこりと笑った。
にこにこと笑いあう二人を、何処か心配そうにチェシカが眺めていた。
旅暮らしの精霊憑き さなぎ うか @sanagi0115
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