……なんと表現すればいいのか。
この胸が締め付けられるような読後感は、ちょっと僕の陳腐な言葉では表せない。
物語は、主人公が久しぶりに会った同級生と、昔見た「幽霊」の正体を回想を交えながら推理していく、というものです。
ミステリ的な仕掛けに騙されることは残念ながらなかったのですが、最後まで読み終えた後、もうそんなことはどうでもよくなっている自分がいました。(笑)
描写が巧く、京都の風景が目に浮かぶようでした。淡々とした文章でありながら、終盤の主人公の言葉一つ一つが、心に響きます。
ミステリーが好きな人もそうじゃない人も、読んでない人はぜひ読んでください。
きっと、胸が締め付けられますよ。
切なすぎる叙情的な文章が涙せずに居られない、非常に技術力の高い小説です。
卒業式の夜にみんなで行なった、遠足という名の肝試し。
そこで遭遇した生首の怪異を、論理的に解き明かすのですが、これがまた甘酸っぱい青春の思い出とあいまって、胸に来るものがありました。
1話に2万文字ありますが、すんなり読めてしまいます。当時の出来事と現在を交互に書くことで緩急を付け、何より肝試しの様子がスリルに満ちており、あっという間でした。
京都の地理にも長けていて、酒呑童子の首塚など衒学面もバッチリ。
確かな知識に基づいて執筆されているため破綻がなく、真相に至るヒントも無駄がありませんでした。
何よりも、最後に。
幽霊なんて居るわけないじゃない、と彼女は呟いたけれど。
確かにあなたはそこに居て、微笑みかけていたのですね。
誰もが老いて行く、その坂で。