第8話 有名人


「そういうことなのよ、ア・ナ・タ」


まぬこ姫、いや、そのキモいおかまはこう続けた。


「あなたにいきなり月に来てもらうのは申し訳ないからぁ、あたしがはるばる地球に来てあげたのよん。ぶゅふふふ。」


「あ、あの…、かぐや姫ってあのかぐや姫…?」


「そうよ、あたし地球では有名人みたいね。ぶゅふふふ。」


「は、はあ…。」



話が区切れるのを待っていたのか、黒服の男がまた話し始めた。


「我々は月から姫の旦那様に適切な人物を観察しておりました。すると、日々の行動、容姿、色々な要素を加えて吟味した結果、見事あなた様に決定いたしました。よっ、色男!!」


唐突に拍手を始める男。そうか、こいつも頭おかしいんか。


「いや、あの、話に水を差すようで悪いんですけど、僕、今彼女いるので結婚は無理です。」


「ふむ、そうくると思っておりました。それも我々は調査済みです。お相手の方は高校1年の時に同じクラスだった栗野結衣くりのゆいさんですね。受験に影響するといけないという理由で、大学に進学してから付き合うことにしたと。なので現在付き合い始めて4ヶ月ほどとなりますな。」


「…あの、一旦警察呼んでいいです?」


「ダメです。……ええ、話を戻しますと、あなた様には彼女がいる。一般的に考えて、結婚は不可能です。しかし、我々はこう考えたのです。あえて不利な状況においてこそ、真の愛が生まれると。」


「つ、つまり…?」


「これから半年、まぬこ姫と栗野様があなた様を奪い合う、"愛の死闘デスマッチ"を開催しようと思います。…いえ、開催します。その上で、半年後にあなた様にどちらかお一人を選んでもらい、結婚してもらいます。まあ、姫が勝つことは目に見えていますがね…。では、スタートっ!!」



かくして、宇宙一馬鹿馬鹿しい決戦が始まったのであった。

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月を恨め @wakken

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