この世界の真実、それが紐解かれた時――。


 好きなんですよねえ……タイムマシンもの。
 古くは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」から、最近では、「シュタインズ・ゲート」、他etc。

 その上、美少女アンドロイドが登場と、大好物なSF二大要素が含まれていたことで、連載中の作品の執筆も忘れて、読書に没頭してしまいました。

 設定が凄く興味深く、おどけすぎず、かつ堅苦しくもならない洗練された絶妙な筆致と相まって、とても「読ませる」作品だと感じました。
 小説において、この「読ませる」という要素は、自分で執筆する際もそうですが、とても重要なことだと思うのです。
 プロの作家さんの作品であっても、読者をどう惹きつけるかには苦心するもの。
 この作品は、その「読ませる」という要素を多分に含んだ秀作なのです。
 SF好きな人であれば言わずもがな、そうでない人も、予想のつかない起伏のあるストーリーを、「え、次どうなるの?」と楽しく読み進めることができる。

 小難しい理論などがペダンチックに語られすぎることなく、必要最小限の説明で抑えられていることと、それが作風にマッチしていて、すんなりと入ってくる、という点も良かったですね。

 科学とファンタジーの融合。
 面白い試みですし、成功しているよい一例です。

 自分は本格ミステリィ作品を多く書いていますが、ミステリィというのは、探偵がいて殺人事件が起こって――という王道の展開ばかりでなく、優れた作品の中には、おしなべてミステリィな要素が含まれているものです。
 「謎」というものは、どういう形であれ、それだけで読者を惹きつけてしまうものですからね。
 その「謎」をこれだけ興味深く読ませられる作品というのは、そうそう他にはないものと。

 異世界転生ものという王道テンプレを思い浮かべてしまうところで、自分はそうだと聞いただけで、食指が動くことがなくなってしまうのですが、こういった形で、今とは別の世界を描くファンタジーだと、まるで違ってくるのですね。

 新しい要素がふんだんに盛り込まれたこの壮大なSFファンタジーは、☆3つでお薦めです。




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