一つどころかたくさんこだわりを持っているよくばり

本作は異世界ファンタジーである。
異世界ってことは中世ヨーロッパ風かな、と一瞬思ったけど、ガス灯とか出てくるし、なんかスチームパンクっぽいガジェットがぽつぽつと出てくるので、19世紀くらいの英国かイタリアか、漠然と西洋あたりが下敷きになった世界観らしい。
それでいて、蒸気や潤滑油のニオイやウォーターハンマーや歯車の軋む音が響いてくるほどのガチガチなスチームパンクではなく、ほんの少し味付け程度に出てくる匙加減。このへん、作者のこだわりが感じられる部分です。
物語の内容は、魔法少女が活躍するもの。アニメでは定番で、そこから派生してラノベでもよく描かれるネタ。それでいて何をやるかというと、鞭をふるいながら怪盗。怪盗ものもアニメでよくあるものだけど、魔法処女でかつ怪盗というのは、ありそうで無かった組み合わせのような。いや私が知らないだけであったのかもしれませんが、両取りを狙うのはだいぶん欲張りであることは確実です。ここも作者のこだわりか。
で、実際に本文を読むと、丁寧につづられた描写が、独特の世界観の中でキャラクターの女の子たちを活き活きと描き出します。
何度も言うけど、本作品は作者がこだわりにこだわりを貫いた作品なのだろうと思う。
カクヨムで読むなら、そういった作者の書きたい気持ちが熱いパトスとなって迸っている作品の方が面白い。
少しスチームパンクと魔法少女と怪盗を掛け合わせたらどうなるのかを見届けるのだ。

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