幾多の絶望を乗り越える、愛の軌跡の物語

「スライムを召喚する」ことと「クッキーを焼く」ことは似ている。
 スライムを召喚することで、スライムを召喚する間隔は短縮され、「主人公がスライムを召喚する間隔の短縮」により、展開が加速する。
 加速する中で繰り返されるのは、スライムしか引けない地獄だ。

 確率が収束するには、人生は短い。試行回数もまた絶対ではない。
 情熱で確率は越えられないし、奇跡は起きない。繰り返すほどに心は毒に侵され、硬化する。

 そんなスライムを召喚し続けることで摩耗する精神を支え、一片の人間性を残し、主人公を最後まで人たらしめた愛、それが、再読の度にその重みを増す良書。

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