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空飛ぶ相手を倒すには

 人に誘われ、ここしばらく「モンスターハンター」というゲームをプレイしていた。特徴あるさまざまな武器を使い、巨大なモンスターを倒すゲーム――というのはもはや言わずもがなか。なおもっぱら操虫棍しか使っていない。


 さて、そのゲーム中に登場するモンスターは基本的に「○○竜」の渾名がついており、多くは飛行能力を持つ。遠距離攻撃武器ならばいざ知らず、近接武器のプレイヤーはいざ敵モンスターが飛翔すると攻撃できずに降りてくるのを待つばかりになってしまう。なんなら空中からの攻撃から逃げまどうはめにもなる。


 そんな空中を飛ぶ相手とどう戦おうか。今回はそんなお題で考えてみたい。応援コメントにて頂いたお題への返答でもある。


 まずは相手を同じ場所、地面に落としたい。


 カクヨム発の「空手バカ異世界」の序盤にも、飛行する翼竜を相手に対戦する場面がある。そちらでの対処法は本編をご参照いただくとしよう。


「空手バカ異世界」輝井永澄

Web版: https://kakuyomu.jp/works/1177354054884503755

書籍版: https://fantasiabunko.jp/product/201902karatebaka/321810000866.html


 先のゲームにおける常套手段は「閃光弾」だ。眩い光を発する物体を正面側に飛ばすことでモンスターを墜落させる。

 なるほど、飛行とは前が見えていなければどこへ向かうかわからないし、翼が硬直すればたちまち揚力を失って墜ちるのは必然と言えよう。


 いやいやその場に静止――ホバリングすればいいじゃないかと思うところだが、あれはハチドリのような一部の小型鳥類か、トンボのような昆虫の一部しかできないらしい。飛行とは基本、羽ばたくか滑空するか、いずれにせよ前進しながらでなければならない。いや、創作において「なければならない」とは随分と無粋であるか。


 ともあれ、仮にそのような設定であるとか、ジェット噴射などホバリングができる飛行方法だったとしても、その場に留められたなら好機だ。そのスキに動力を奪うことができれば良い。


 以下は私が過去に書いたある未発表作、の、さらにボツとなったシーンからの引用である。

 攻殻機動隊のようなSF世界で、両脚にサイボーグ002ばりのジェット噴射機構を装着した敵との交戦だ。


=====

 ヒョイ、と球体を放り上げる。そして鉄パイプを両手で大きく振り被る。片脚を軽く上げて一本足で軸を取る。

 振り抜いた鉄パイプが球体を打ち据える。球体は一直線に敵の、その旋回した先の空間へと飛翔する。直撃を避けようと急停止をかけたその次の瞬間、球体は敵の目の前で爆発した。

 もうもうと吹き上がる黒煙。パチパチと小さく紫電が走る。敵のバイザーに夥しい量のエラーが表示された。ありとあらゆるセンサーが誤作動を起こしている。

 吸着性があり、しかも帯電している金属粉を詰めた煙幕だ。センサー類によって感覚を強化している人間にとっての天敵と言える代物だ。当然敵側もそれは常に警戒していたのだが、まさかこの高さまで打ち上げる輩がいるとは思いもしていなかった。

 だがセンサーを封じられた程度で怯みはしない。バイザーを投げ捨て肉眼で標的を見据える。

 が、彼とてこれで退散するような相手ではないと重々承知だった。足元に転がっていた何かの部品と思しき塊を足で蹴り上げ、再び鉄パイプを振り被る。敵がバイザーを取った時にはすでに、カァンと音を響かせ打ち上げられた後だった。

 右脚が爆発した。鉄塊がジェットブースターの噴射口を直撃したのだ。たちまち敵の体はバランスを崩してきりもみ回転を始める。姿勢を立て直そうにも肝心のセンサー類は使い物にならない。回転する視界では何も見えず、三半規管は天地の別もつけられなくなっていた。

=====


 感覚器官(ここではセンサー類)を封じ、次いで動力を奪っている。最初に打ち上げた煙幕は、追跡ミサイルを振り払うための「チャフ」のようなものを想定している。


 あるいはこんな二段構えの対処でなくとも、あらかじめ準備ができるなら、投網のようなものを空中に射出して敵を絡め落とすこともできるだろう。

 網でなくとも、トンボ釣りのような簡単な道具でも良いかもしれない。トンボ釣りとは、糸の両端に小石を付けたものを空中に放り上げ、トンボの身体に巻き付けて落とす採取方法だ。地面と水平に投げることで走る人間や馬の足を絡めて転倒させる「微塵(ボーラ)」と同じだ。胴や翼に巻き付けば飛翔する相手も落とせるだろう。


 あるいはいっそ、落とさずに空中で倒すこともできるだろうか?


 ミッション・イン・ポッシブルの第一作終盤では、高速鉄道からヘリコプターで逃走しようとする敵を、ヘリコプターのワイヤーを車両に接続してトンネル内に引き込むシーンがある。

 ヘリコプターの操縦士がよほどの技量を持っていなければ、トンネルに入る事すらできずに入り口壁面に衝突しただろう。

 劇中ではトンネル内に侵入することはできたが、離脱もできず、わずかでも壁面に接触すれば墜落間違いなしの状態はヘリコプター側にはかなり危機的状況であったはずだ(劇中では余裕の表情を見せていたが)。

 主人公はこのシーンで銃を所持していなかったが、仮に持っていたなら、動くに動けない機体の中を射撃することができたに違いない。


 つまりは、飛行しづらい状況――たとえば雷雨や砂嵐の中、狭い空間――に相手を引き込むことができれば、飛行していることを弱点に変えられるかもしれない。


 さらに視点を変えて、味方を敵と同じ高さまで持っていくのはどうか?


 これまた映画の「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」では、戦闘機に海岸へ追い詰められたある人物が手持ちの傘をバサバサと開閉して海鳥の群れを飛び立たせ、戦闘機のプロペラを破壊して墜落させていた。つまりは「バードストライク」だ。

 敵と同じく飛行できる鳥を味方につけたパターンだ。


 ギャグでも良いなら、人間砲弾も選択肢としてはありかも知れない。

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小説家のための武術秘伝 古月 @Kogetsu

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