第4話 賢くあろうとせず、健全であろうとしなければならない

 その日は、11月28日。もう年末に近い。水曜日だが10時くらいになると8席あるカウンターが満員になりボックス席にも5人の団体が来ている。給料日のちょっと後だからなのだろうか、なかなか景気がいい。

 出勤しているのは、ルカ、リナ、エリコ。

 リナがカウンターの中にいて、ルカがボックス席につき、エリコがカウンターの外側にいる。やや女の子不足だが、団体は短時間で帰ることが多いので、この人数でもなんとかなりそうだ。

「ねえねえフッ君…」

 エリコが、優男のフッ君に話しかけた。

「拙者は、イラン人とつき合っているのでござる」

 最近エリコは、お客さんに対しても「拙者」とか「~ござる」とか言うようになってきた。

 それで文句を言われることもないので、無理にプライベートと変える必要もないと、思っているのだろう。その方が個性的でいいかもしれないと考えているのか、注意しても効果がないと考えているのか、マスターも注意しない。

「その男はイケメンなので大好きなのでござるが、このままつきあっていても収入の少ないイラン人なので結婚はできないと思うのでござる」

「えー。イラン人?なんでそんな人とつき合うようになったんだ」

「ナンパされたのでござる」

「そうか―」

「それで、結婚できないのにつき合っていても、いずれ別れなければならないので、そこが困ったことなのでござる」

「うーん。まだ若いからそんなに先のことを考えなくてもいいんじゃないかな」

「若いと言ってももう、25でござる」

「でも、今は女性でも30過ぎてから結婚する人はたくさんいるよ」

「それもそうでござるが」

「それに、今、国際結婚する人はたくさんいるし、収入なんか今少なくたって、がんばってやっていけば増えるかもしれないと思うんだけど」

「それもそうでござるが、彼と話したら、日本の移民政策次第では、国に帰らなければならなくなる恐れもある。それに、もしイラン人と結婚したら、親が悲しみそうなのでござる」

 その時、ドアが開き、ルカとリナが「いらっしゃいませ」を唱和したが、エリコは話に夢中になっていて、唱和しない。

 入ってきたのは、初めての2人組のお客さんで、ルカがボックス席に案内し、「2時間飲み放題で3000円です」とシステムを説明した。

 が、エリコはそれには無関心で自分の話をしている。


 店が終わるといつものシルバー酒場で反省会を開いた。

 参加したのはマスターとリナとルカ。エリコのことが話題になった。

「なんだか、仕事が上の空で、困ったもんだね」

 とマスターが言うと、ルカも同意した。

「なんか、店の中で自分の彼氏のことばかり話していて、仕事をしているとは言えないと思うわ」

「確かにそうだ。それで、イラン人の恋人がいるんだって」

「そうらしい。今日もフッ君とその話をしていた。最近その話が始まるととまらなくなっちゃう」

「恋愛問題さえなければ、わりあい仕事はできる方なんだけどなあ」

「そうねえ。でもこればっかりは本人の問題で、周りがなんとかする方法はないような気がするんだけど…」

「くびにするのは簡単だけど、それ以外でうまい方法はないかな」

「マスター、本人に直接注意したことある?」

「3回くらい言ったけど、全然変わらない。こういうことは女同士で言った方が効果があるんじゃないかな?」

「私も2回くらい言ったけど全然変わらない。いきなりくびって言うのもかわいそうだけど、でもそれではどうしたらいいかって言うと、わかりません」

「そうなんだ。困ったもんだ。まだ、別の見方もできそうだし、少し考えることにしようか」

 リナは、自分の意見は言わなかったが、話をよく聞いている様子だった。


 次の日マスターは、いつもの喫茶店に入り席に座ると、例によって赤いナップザックから『プロフェッショナルの条件』を取り出して読み始めた。

 現在の課題に関係ありそうな、「Part4 1章 意思決定の秘訣」という章を読むことにした。

 読み始めると、まず、この文言が目についた。

 

 個々の問題ではなく、根本的なことについて考えなければならない。


 この部分にマーカーが引いてあった。4~5年前に通して読んだ時に引いたのかもしれない。

 スナック経営で根本的なことというのはなんだろうか。簡単に言えば、なんでスナックにお客さんが来るのか?スナックはお客さんに何を提供するのか?ということだと思うのだが、これはけっこう考え出すと難しいことかもしれない。

 その数行後にこんなことが書いてある。


 賢くあろうとせず、健全であろうとしなければならない。


 この部分にもマーカーが引いてある。

 ハードボイルド小説みたいでなかなかよさそうなフレーズだが、これについては解説らしい解説が出ていなくて、たぶん前に読んだ時にも具体的にどういうことが言いたいのかわからなかったかもしれない。もう一回この本を相当注意深く読み直したり、ドラッガーの書いた他の本を読んだりしないと本当に理解することはできないところだろうか。

 ドラッカーの書いたものは概ね明快で言っていることはわかりやすいが、ところどころ読み手に立ち止まって考えることを求めるような記述がある。この部分もその一つなのだろうか?

 マスターは、この部分で5分くらい考え込んだが、ずっと考えていても仕方がないと思い、とりあえず「物事は知的に考えすぎないで常識的に判断しよう」というくらいの意味にとっておくことにして、先を読むことにした。


 基本をよく理解して決定すべきものと、個々の事情に基づいて決定すべきものとを峻別しなければならない。


 これは今回の問題と関係がありそうだ。

 個々の事情というのは、エリコがお客さん相手に話しているようなイラン人との恋愛問題だが、基本とはなんだろうか?根本とだいたい同じようなことだろうか?

 この場合、「女の子には、時給を払っているのだからちゃんと仕事をしてもらわなければならない」という、あたりまえのことが基本なのだろうか。


 第一に「基本的な問題か、例外的な問題か」「何度も起こることか、個別に対処すべきことか」を問わなければならない」基本的な問題は、原則や手順を通じて解決しなければならない。


 相手がイラン人ということだけ見れば珍しいが、女の子が恋愛に悩んで仕事に身がはいらなくなるのは、例外的なことではないし、何度も起こることである。

 

 実際には、真に例外的な問題というのはきわめて少ない。


 そうかもしれない。

 やはり、ここは原則通り一旦辞めてもらった方がいいのだろうか?でも、原則に関しては別の見方もできそうだ。「女の子には、ちゃんと仕事をしてもらわなければならない」というのは確かにそうだが、「ちゃんと働く」という言葉だってとらえ方は一つではない。

 マスターは本を閉じ、天井を見上げてため息をついた。


 その日の10時ごろ―。

お客さんが10人くらい。カウンターに6人とボックス席に4人の団体客で、まあまあの入りだ。

 エリコは沢田さんと話している。

「私がすごい可愛い子だったら、イケメンでお金持ちのなんの問題もない日本人とつき合ってると思うし、もしひどいブスだったら、私が今つき合ってるようなイケメンの男からは相手にされない。私みたいな、中途半端なのが一番悩むのでござる」

「それは、なんか単純化しすぎている考え方だなあ。あんまり客観的に見て正しいこととは思えないけど、そう考えたくなる気持ちはわかるような気がする」

「その言い方は上から目線でござるよ」

「そうかもしれないけど、本当にそう思うんだから仕方がないじゃないか。でも、日本に来ているイラン人の男には、日本人と結婚すれば、ビザが切れても本国に送り返されないで済む、という考えで日本の女性とつき合っている輩もいるみたいだから気をつけた方がいいよ」

「拙者の彼はそんな人ではないのでござる」

「エリコちゃんの彼のことは知らないけど、一応そういう場合もあるっていう話。それと、もし本当に真面目に考えているんだったら、なんで彼が日本に来たのか、もし調べることができたら調べた方がいい。日本に来ているイラン人の成人男子だと、だいたい故郷に女房・子どもがいて、家族のために家を建てたり商売の元手をつくったりするために出稼ぎに来ている人が多いからね」

 その時、カラオケのイントロが流れた。

 エリコは、歌の声で話がしづらくなるのが嫌なのか、少し不機嫌になった。

 歌っているのはボックス席にいる団体客の一人。その団体の中では「先輩」「先輩」と呼ばれていて、髪が薄めで白髪まじり、40代後半か50代前半くらいに見える体格のいいお客さんだ。課長か係長か、正式な役職はわからないが、とにかくその団体の中では偉い人らしい。

 最近この店では、こういった職場のメンバーで飲みに来る団体のお客さんが減っているので、貴重な存在である。

 歌っているのは、昭和風の演歌。森昌子の『先生』と言う曲。


 幼い私が胸こがああしー

 慕いつづうーけえたー、人の名は

 先生、先生、それはせんんんーせえいいー


 ここでその団体のメンバーは口ぐちに叫び始める。

「せんせええええーーー。ぼくう、ぼくう、物理いつも赤点でしたあああああ」

「せんせいいいいいいーーー。ぼくは、授業中にさわいでばかりいました。ごめんなさい」

「せんせい、ぼくは、先生が授業中に言っていた、さむい…、さむいオヤジギャグが大好きでしたあああああああ。大好きだったのですよーーーー」

 歌が歌われている間にエリコは少しずつ不機嫌そう顔つきが変わっていき、歌い終わったら拍手をした。

 今のエリコでもスイッチが切り替わるときはあるんだな、とマスターは少しほっとした。

 エリコが帰るときにマスターは、次の日クリスマス・カードの発送準備をする仕事があり、手伝って欲しいので「7時ごろ店に来られるか」と聞いたら、「来る」という返事だった。


 この日の反省会のメンバーも、参加したのはマスター、リナ、ルカの3人で、例によってシルバー酒場でビールを飲んだり焼き鳥を食べたりしながら話した。

「昨日も言ったように、辞めさせるのは簡単だけど、なるべくいろいろな見方を比べてみて考えた方がいいと思うんだ。リナは昨日しゃべらなかったけど、どう思う」

「昨日、フッ君はボトルも入れてくたし、いつもよりはずいぶん長い時間いて1万4千円払った。そんなことはかなり珍しい。今日の沢田さんもいつもよりも長くいた。

エリコのイラン人との恋愛を相談する一風変わったトークは、かなりの臨場感にあふれ、リアリティがありドラマチックで、なかなかお客さんの興味を引きつけている。フッ君や沢田さんだけでなく、周りの人も興味を持って聞いていたようだった。私の立場で言うのも変だけど、細かい実務については、それももちろん大事だけど少し目をつぶって、お客さんがある意味楽しんでいるところにも注目した方がいいと思いますよ。私たちだって、他の女の子たちだって、エリコのような精神状態になる可能性はあるんだし。ちょっと変だからっていちいちクビにしていると、どんどん仕事に慣れていない女の子を雇う必要がでてくる」

「なんだか労働組合の委員長みたいな意見だな」

「マスターはわりあい話をすると聞いてくれるんで、少し変わった意見も思いつきます」

「別に変わった意見ということはなくて、これはこれで必要な見方だ。確かに女の子は1日に3人から5人くらい入っているわけだから、みんなが同じ仕事をしないでも、トークの係・気配りの係・盛り上げ担当とかある程度棲み分けした方がいいのかな。ルカはどう思う?」

「そういう考えもあるけど、どんなお客さんが来るかわからないし、いつも同じメンバーで仕事をしているわけでもないし、ある程度はみんな同じようなことができた方がいいような気がします。それに、今日は沢田さんがわりと常識的なことを言っていたけど、中には面白がって変にけしかけるようなことを言う人もいるから、少し休ませてあげた方がいいんじゃないでしょうか?」

「でも、エリコにとっては、年上の男どもの考えをいろいろと聞いていろいろな考え方を学ぶチャンスのような気もするし、変なことを言う人もいるけど、わりあい親身になってアドバイスする人もいるから、言われたことをちゃんと自分で考えれば悪いことにはならないような気がする。親とか教師以外の年上の男の人と話をする機会も、今のアヤメちゃんには必要じゃないかしら?」

(確かにドラッガーが言っている通りだな)

 マスターは「決定が、正しいものと間違っているものからの選択であることは稀である」というドラッガーの言葉を思い出した。どっちも正しいとしか言いようがないが、そろそろどっちかに決めなくてはいけない。

「まあ、どっちもどっちのような感じで明らかに正しいやり方はないのかもしれないけど、確かにお客さんが喜んでいる面もあるので、今くらいの状態だったら働いてもらうことにしよう。これ以上変な感じになったらクビかもしれないけど」

 ルカとリナは、これには特に反対しなかった。


 次の日、マスターはいつもの喫茶店に入り、『プロフェッショナルの条件』の昨日の続きを読み始めた。

 気になる文言がいくつかあった。


 意思決定は判断である。いつくかの選択肢からの選択である。しかし、決定が、正しいものと間違っているものからの選択であることは稀である。


 昨日思い出した言葉は、確かに出ている。

 意思決定が判断だとか選択なのは当たり前のような気もするが、基本的なことなので確認しておく必要があるので書いてあるのだろうか。次の「正しいものと間違っているものからの選択であることは稀である」というのは確かに、そのとおりなのだろう。初めから明らかに正しいとわかっていることを選ぶのだったら、意思決定とは言わないのかもしれない。


 正しい決定は、共通の理解と、対立する意見、競合する選択肢をめぐる討論から生まれる。


 うちの店のメンバーでいつもやっている反省会も、一応討論と言えるかもしれない。今回も一応「対立する意見」や「競合する選択肢」らしきものはあると思う。「共通の理解」も、どの程度のものなのかは何とも言えないが、多少はあるのかもしれない。


 成果をあげるには、教科書のいうような意見の一致ではなく、意見の不一致を生み出さなければならない。


 今回は、リナがルカとは違う意見を言ってくれたので、意見の不一致は、確かにあった。

 考えてみると、4~5年前にこの本を2回くらい熟読した頃から、女の子たちとの反省会でも、なるべくいろいろな意見を言ってもらうようしている。

 その頃にこの本を読んだ印象は、よさそうなことは書いてあるが、実例が歴史上の有名人などスーパーマンみたいな人が多いし、作者も巨大企業のコンサルタントをやっていた人なので、小さなスナックの経営に役にたつようなことはあまりないような気がした。が、意外と影響を受けているし役に立っている部分もある。

 マスターはそんなことを考えながら、喫茶店の片隅でアメリカンコーヒーを飲んでいた。

 この日は、とくに文言を手帳に書き写すことはしなかった。


 7時ごろマスターが店に行くと、エリコはもう来ていた。

 お客さんに出すためのクリスマス・カードをテーブルの上に出して、手書きでメッセージを書くように頼んだ。

 エリコは、言われた通り、筆ペンで熱心に1枚1枚書いている。とても集中していて、顔つきがいい。

 恋愛問題で悩んでいる女子にとって、こうした作業をするとことは、心のためにいいのだろうか?

 マスターはその様子を感心しながら見ていたが、エリコは、1枚可愛いデザインのカードを数秒間見つめてから何も書かないで、書き終えた束の方に入れた。

(何をやっているんだろうか?)

 なんとなく嫌な予感がした。

 少ししてから、マスターは、トイレの方に向かって歩いて行き、突然振り向いた。

 エリコは、書き終えた束の中から一枚抜き取って、それをバッグの中に入れようとするところだった。

 マスターが「コラー」と叫ぶと、エリコは、びくっとした。

「ちょっと、今ちょろまかそうとしたな。1枚だけ何も書かないで書き終えた方に入れたから、何やってんのかな、と思ったけどこんなことだったか」

「ごめんなさいでござる」

「手伝ってくれたんだから1枚くらいあげるけど、見てないところでちょろまかそうという根性がよくない。ちゃんと言ってくれたら『いいよ』って言ってあげるのに。また例のイラン人に上げようと思ってたのか?まったく。そんなせこいことをする奴は、クビだクビ」

「仕方がないのでござりまする」

 と言ってエリコは帰ってしまった。

 その日は戻ってこなかったし、その後一週間くらいしても来ない。マスターは電話してみたのだが、出ない。

 その頃、沢田さんから聞かれたのでマスターは正直に答えた。

「うーん、実はクリスマスカードを書く仕事をやってた時に1枚ちょろまかそうとするから何の気なしに、クビだクビ、と言ったらそれっきり来なくなった」

「本気にしてしまったんですか?」

「いや、そうじゃないと思うけど…。たぶん、恋愛トークに夢中になって他の仕事ができていないのが、本人わかっていて、他の子に悪いと思ってこなくなったんじゃないかな?」

「それじゃあ、そのうち戻ってくる可能性もあるんですか?」

「うーん、わからない」


 1か月あまり経ったある日の昼過ぎ、エリコからマスターに電話があった。

「拙者は、また店に行きたいのでござるが、行っても大丈夫でござろうか?」

「大丈夫と言えば大丈夫だけど、イラン人はどうなった?」

「それが、国に帰ってしまって会えなくなったのでござるよ」

「ずいぶん急だね」

「ピザが切れて不法入国状態なのを見つかったらしいのでござる」

「それで追っかけていかないのか?」

「イランのどこに行ったかもわからず、それは無理でござる。もうすっぱりとあきらめたでござるよ」

「そうか。まあ、来たければ来てもいい」


 その日からエリコは来るようになった。

 以前のような臨場感あふれるドラマチックでリアルな恋愛相談トークはなくなったが、他の女の子と同じように普通に仕事ができるようになった。

 笑い上戸なのも相変わらずだ。

「エリコちゃんが戻ってきたことだし、今日は、久しぶりにサザエさんの歌を歌おう」

 と沢田さんが言った。

「ああ、あの面白い歌でござるか。あの歌は拙者も大好きでござる」

 カラオケのチケットは、ちゃんと歌う寸前に1回・1枚だけもらった。

 イントロが流れ、沢田さんが歌い出した。


 ズボンを脱いで町まで、出かけたよ

 パンツも、脱いじゃう、愉快なマスオさん

 みんなが見つめてる

 お日様も見つめてる

 女が見つめてる

 とってもいい気持ち


「わっはっはっは。おなかが痛いでござる。なんで…、なんで町に行くのにズボンを脱ぐのか…。うっしっしっしっし。なんでパンツまで脱ぐのか。うっしっしっしっし。うっきょっきょっきょっきょ。ぐるじいー。腹が痛い。女が見つめていると気持ちがいいーーーのかーー。なんで女が見つめていると気持ちがいいのか。おかしいではないか。なんでなのか。もしかして…、もしかしてマスオさんは露出狂なのでござるかああああーーー。うっきょっきょっきょっきょ。いっしっしっしい。ぐるじいー。腹が痛くて死にそうでござる。ぐるじいー。うわっはっはっは…」

 相変わらずの激しいリアクションは健在だ。

 沢田さんは、満足顔である。おそらく「俺が一生懸命考えた名曲に対しては、これぞ正しいリアクションである」と考え大いに納得しているのであろう。

 マスターもその一部始終を見て安心した。

(確かに、あの臨場感あふれるリアルな恋愛相談トークはなくなったが、これでいいのだ。なんと言っても、この方が気を使わないですむ)

 マスターはドラッガーの言葉を思い出した。


 賢くあろうとせず、健全であろうとしなければならない。


(確かにこの方が健全だ)

 マスターを安心してタバコに火をつけ、今日もどこかにお出かけしようかな、と思った。

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