終章 青嵐

エピローグ



 この杯を受けてくれ

 どうぞなみなみ注がしておくれ

 花に嵐のたとえもあるぞ

 サヨナラだけが人生だ



 サヨナラだけが人生ならば、また来る春は何だろう

 はるかな地の果てに咲いている、野の百合は何だろう

 サヨナラだけが人生ならば、めぐり会う日は何だろう

 やさしいやさしい夕焼と、ふたりの愛は何だろう

 サヨナラだけが人生ならば、建てた我が家は何だろう

 さみしいさみしい平原に、ともす灯りは何だろう

 サヨナラだけが人生ならば、人生なんか、いりません





 早咲きの桜舞い散る境内に、その人たちはいた。

 「おおい」と大きく手を振れば、はじめは驚いたように目を見開いていた面々だが、やがて諦念を含んだ微笑へと変わる。お調子者の二人などは、私の姿を見つけると、奇声を上げながら抱き着いてきた。それを、総司がなぜか躍起になって剥がしにかかっている。


 見慣れた笑顔を、嗅ぎ慣れた匂いと、触れ慣れたあたたかさ。

ここが私の居場所だと、心からの笑みが零れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブルー・ブラスト 朝木モコ @bokke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ