"あそこはガチ""有名所ってのは知ってる""夜とかめっちゃでそう"

当初は「こんな客は嫌だ!」的な内容を想像していたが、ところがどっこい純粋に幽霊・怪奇現象ものである。

霊が集まるコンビニで霊障にまみれながら仕事をする袴田の様子は、ちょっとしたホラーゲーム実況のようだ。
人間の登場人物たちがキャラ立ちしていて快活なため、かえってホラーシーンとの落差が際立つ。

たとえば霊が見えるヤンキーと深夜アニメ好きなオタク少女という二重人格的な設定の平井さんなどはその代表格と言える。
彼女が登場すると明るい雰囲気のやりとりを楽しく読み進められるわけだが、いつ霊的な落とし穴があるかという恐怖も同時に湧いてくる。
平井に限らずどの人物においてもこれは同じことで、こういう落差の演出こそがホラーの技法である。

それにしても恐怖とは何だろうか。
それは基本的には鋭敏な感受性と想像力であって、そこにないものをあると思ったり、単なる風に過ぎないものに過剰な何かを読み取ってしまうことだ。
そういう感性の操作は小説という言語芸術の十八番であって、恐怖の断片とも言える些細な表現をぜひ楽しんでもらいたい。

(寒すぎる夜をより寒く!? 怖い話4選/文=村上裕一)

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