すれ違いながら想い合う三人が、切なくて愛しい

 表現方法は、言葉の選び方がうまくて丁寧さもあるので、すらすらと読んでしまうかもしれない。
 けれど、これを読むときはゆっくり時間をかけて、文章の奥にある世界を想像してほしい。
 港町、埠頭、車内の物寂しい光景。
 ハナ、ケンちゃん、姫子のそれぞれの髪型。
 三人が好きな相手に言葉を投げる、その瞬間の表情。

 丁寧に読みこみながら想像を膨らませると、そこには切なくて愛しい世界が広がる。
 この物語はその世界が素晴らしいのだ。
 だから、ぜひ多くの人に読んでほしい。
 スクロールする手をゆっくりと、時間をかけて。
 そうすれば、物語で迎える夜明けに辿り着けば、この三人がきっと愛おしく思えるだろう。


(あー、一部の映画ファン 一言。
 「フロム・ダスク~」ってピックアップの文言で、ヴァンパイアとか出るんじゃねえの?とか警戒しなくても大丈夫です。三人の世界にゆっくりとひたってあげてください)