第6話
YO!YO!YO!YO!
俺が埼玉県入間代表
俺がイルマニア
イルマニア
埼玉入間
代表さ
アーイ↑
「アーイ↑を最後に聞いたのは、いつだったかしら」
土曜の夜、一人すた丼をかきこんでいた大澤めぐみは、そんな事を考えていた。
イルマニアはもうこの世界に存在しない。なんだかんだで彼の存在は大きかったのだろう、イルマニアの代わりにパリピこうざぶろうが良く出ているが、あれ以来ゴールデンで特番は組まれていない。
めぐみは会計を済ませ、何か飲み物が欲しいと考えコンビニに向かった。
コンビニに行ったところで特にすることはない。いや、めぐみとしてのめぐみはジャンプを立ち読みしている今この瞬間も仲間達と交信を続けている。
今まで根気強く仲間と交信を繰り返した結果、いくつか分かったことがある。
この世界の時間の流れは一定である。
今まで世界を作り直す度に時間が巻き戻っている、そう感じていたのは大澤めぐみにとってその方が都合がよいからであって、時間は常に同じ速度で流れている。タイムリミットは刻々と近づいているのだ。
めぐみが逃げ込むことが出来る場所は世界の外に存在しない。
正確には、めぐみ以上に大きな空間を支配している者は存在しない、ということだ。めぐみの想像以上に、めぐみの空間支配力は強大だったらしい。めぐみにとって別の世界に逃げる、という選択肢は無意味なのだ。何が何でも赤ら顔のメインストリームに立ち向かわなければならない。
その強大な力からか、いつしかめぐみは同胞達のリーダーとして扱われ、めぐみも当然のようにそれを受け入れた。
前にジャンプを立ち読みしたのは火曜日、会社の帰りだっただろうか。
火曜日の会社帰り、この日も記憶を失った同胞がこの世界に逃げ込んできた。ここ最近、記憶喪失の同胞が流れ着くことが多い。
加齢堂研究チームの調査によると、彼らはメインストリームの奔流に飲まれて記憶を失った可能性が高い。
つまり、もうそれほど時間がない。
メインストリームはすぐそこまで迫っているのだ。
めぐみ率いる同胞団の空間集合が、メインストリームに通用するかどうかは分からない。しかし、めぐみたちに出来ることは、決戦直前まで赤ら顔の侵入を防ぎ、宇宙を成長させること、それしかないのだ。
記憶を失った同胞は、各々がめぐみの世界の構成員として日常を送っている。めぐみ達から彼らに対して信号を送る行為は、世界の均衡を崩す恐れがあるために固く禁じられている。
自分はこの世界とは異質な存在である。
記憶を失っても、己がイレギュラーである事を無意識に感じ取っているのだろうか。同胞達は構成員の中で孤独になる傾向が強い。
めぐみはこれをなんとかしてやりたいと考え、なるべく記憶喪失の同胞同士を近くに住まわせるようにしている。これが功を奏しているのだろう、己を知らぬ同胞達は互いに惹かれ合い、安らかな日々を過ごしている。
記憶喪失、すなわち危険因子を持つ同胞の受け入れに反対する者も少なくない。しかし、めぐみにとって彼らは難民であり、決戦を共に戦うソルジャーであり、一緒に宇宙を成長させる担い手であり、何より大切な仲間なのだ。
めぐみに彼らを見捨てるという発想は最初から存在しなかった。
絶対みんなで生き残るのだわ。
めぐみはすた丼による喉の渇きを潤す飲料水を手に取ってレジに並ぶ間、ひそかに決意を固めていた。
そうだ。何としても勝たなくてはいけないのだ。たとえわずかな可能性であっても。同胞団のリーダーとして、左右対称になるのをただ待っているわけにはいかない。
カギを開け、玄関のドアを開く。
めぐみがさっき買ったのと同じ飲料水を歌舞伎役者が飲んでいる。そんな様子がテレビに映っていた。めぐみはテレビをつけっぱなしだったことを思い出した。どうやらドラマが終わり、次の番組に向けてCMをやっているようだ。
部屋には特に変わった様子はない。出かける前と同じワンルームである。
一方で、今この瞬間にもめぐみ達の宇宙は成長し、メインストリームはこちらに向かって流れている。
やるしかない。
めぐみは飲料水を飲みながら自問自答した。
レモネードが喉を通る間にもめぐみは同胞たちを指導し、彼らは脅威に備え調査や研究を行っている。
「やるしかない。やるしかないのだわ」
めぐみがCM明けのテレビ番組を見てそんなことをつぶやいていた時、ある記憶喪失の同胞達が己のささやかな楽しみのため、めぐみの世界で言うところのインターネットと呼ばれる道具である計画を実行しようとしていた。
無念 Name ●●●● ○○/○○/○○(905:55:55 No.1145141919893 [消]del
なんだこれ!?思わずタンブらずにはいられない!!
これがあれかい?美術大の学生さんが作ったって言う女神天使きめコナちゃんかい?
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