第4話

イルマニア

埼玉入間

代表さ

アーイ↑



YO!YO!YO!YO!

俺が埼玉県入間代表

俺がイルマニア


埼玉県入間市、パリピ代表イルマニア。


入間のパリピはふとした縁から尻叩アスリート「イルマニア」としてスカウトされ、今や尻叩対決世界ランク一位、「世界のパリピ」として名を轟かせている。今年もオリンピック尻叩日本代表として召集された。



YO!YO!YO!YO!俺がイルマニア

帰ってきたぜ埼玉県入間

苦節十年鍛えたケツ筋

今じゃ日本代表さ

アーイ↑



イルマニアはオリンピックに備え、彼のホーム埼玉県入間市で強化合宿を行っていた。既に大会に向けた最終調整のため、連日その肉体を激しく追い込んでいる。



YO!YO!YO!YO!俺がイルマニア

俺はレジェンドお前らヒヨッコ

遠慮はいらねえ打って来な

アーイ↑



イルマニアがこれから行うのは、「打ち込ませ」と呼ばれる練習だ。イルマニアが無防備に尻を露出し、スパーリングパートナーに自由に打たせる。打ち込む側の打撃練習というよりは、打ち込まれる側の耐久力を鍛えるためのトレーニングだ。


イルマニアは常に10人程度のスパーリングパートナーを雇っている。交代制をとらなければ、イルマニアの強靭なケツ筋に打ち込み側の手がもたないからだ。



YO!YO!YO!YO!俺がイルマニア

それじゃあいくぜ

60秒3セット

アーイ↑始め!



パートナーが上げた手が勢いよく振り下ろされる。



――!?



痛い。信じられないほど痛い。アマチュアパリピ時代からケツを晒してきたイルマニアだが、これほどの痛みは初めてだ。あまりの痛みにケツ筋を締めることを忘れているイルマニアのケツに、容赦なく次の一撃が打ちこまれる。



YO!YO!YO!YO!ちょっと待って

痛い!痛っ!ねえ聞いてあ痛っ!

ストップストップ痛っおいちょっと待てあがっ



「黙りたまえイスカンダル君!歌舞伎の稽古に痛みはつきものだ!そんな事で幸四郎を襲名できると思っているのかね雷神イシュタル君!誰が君を歌舞伎役者だと認めたオーマイパスタオーウマイ君!梨園はそんなに甘くないぞウーマンラッシュアワー中川君!聞いているのかねポールマッカートニー君!アイ↑アイ↑言いながら脱糞するのもいい加減にしなさい!けおけおだらしないピピニーデン君の括約筋にもバンテリンは現場でスーッと効いてくれる…これはありがたい…」







ケツにバンテリンが挿入される。遠のく意識の中イルマニアが最後に見たものは、赤ら顔の歌舞伎役者だった。


いつの間にかイルマニアの顔は左右対称になりつつある。



今回もダメだったか。



崩れゆく入間尻叩アリーナを見ながらイルマニアは思った。アリーナだけではない。入間市そのもの、イルマニアが生きる宇宙自体が崩壊しかかっていた。尻叩リングだけが崩壊せずに残っているのは神様からの最後の慈悲だろうか。


イルマニアにとってはこれが最後のチャンスであった。もはやイルマニアに新しく世界を構築する力は残されていない。イルマニアの顔は徐々に正確な左右対称へと近づいていく。


これが完全に左右対称となった時、世界を構成するものは歌舞伎役者、クソコテ、バンテリン、そして特設リングだけとなる。ズボけお音と共に大いなる力の一部として無限の彼方へ還元されるであろう。

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