幻想的な和風異世界で繰り広げられる激動の時代と主人公たちの愛を描いている。 国を変えたいと奔走する主人公、翡翠は妖を見分けることができる。彼の妻となるのは樹齢千年を超す桜の魂が顕現した女性だ。翡翠は彼女を「桜の君」と呼ぶ。 どこかうわべだけのような夫婦となるが、やがて心から惹かれあっていく。 彼らが相手を思うシーンを読むと、ふわりと夢の中に迷い込んだような不思議な感覚だった。 人ならぬものが人を愛するのは愚かだ、と幾度も口にするが、桜の君は翡翠を愛して幸せを得たのだと、ほっとする物語だった。
描写された情景の美しさに、時にうっとり、時に切なくなる作品でした。登場人物のそれぞれに思いがあり、それを押し込めもあらわもしながら紡がれた生きざまは、まさしく桜だったと思います。
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