今からこの作品に出会う方は、主人公の天使を嫌いになるかもしれない。しかし、最後まで是非読んでいただきたい。絶対、見方が変わるから。
天使は仮面のような笑顔で他者と接してきた。心の内では、笑うどころかすべてを見下していた。優しい言葉とは裏腹に、ひどく口汚く罵っていた。そんな天使が、一つの魂(一人の人間)と出会う。いつもついて回るその魂を、天使は邪魔だとしか見ていなかった。しかし、その魂に引き寄せられ、天使はその人間の魂を喰らってしまう。
そして、その魂の味をしめた天使は、それ以上の魂を求めて人間界に降り立つ。そこで天使は、初めて自分の本能と理性とが戦い、混在し、混乱する。そんな中、天使を連れ戻そうとする面々と戦うことになる。
今まで神に最も近く、他者を見下すことしかできなかった天使。他者に興味を持てず、ただつまらない日々を過ごし、役割を消化していくだけの時間。強い霊力は、彼を傲慢にし、他者を冷めた目でしか見えなくしていた。つまり天使は、もっとも強いがゆえに、もっとも弱いのではないだろうか。そんな彼に訪れた変化。そして彼が見た光景。
彼が知りたかったのは。
天使の心に咲いたのは。
短いのに深い。
是非是非、御一読ください!
配慮していますがネタバレも含まれていますので、お気をつけください。
これは最後の一言を読んで、感じるための作品です。
一話は世界描写も美しく、この目で見てみたいと素直に思えるほどです。けれど主人公には腹が立つし描写が多くて進んでいる感じもしなくて多少退屈さを覚えました。
それでも読み進めていくと、主人公が人間という生き物を知っていく過程は割と楽しかったです。それに読者としての私も人間に振り回される高尚な生き物の姿を見て悦に浸ったり、自分の気持ちが分からない状況に同情を覚えたりしました。
そしてもう一度書きますが、この作品を最初から最後までしっかりと読んだ人なら、最後の言葉は絶対、陳腐だとは思いません。ああ、その一言が欲しくて読んでいたのかもな、と思わせるくらい心にグッとくる言葉でした。
でもこれの読み味は間違いなく現代アクションではないですよねー。ジャンルがネタバレに相当してしまうので仕方がないのかもしれませんが。