特別なる力を持った者の、特別ではない物語

とある事情によって各地を転々とする和洋。何番目かに訪れた町で、脈々と受け継がれてきた『神楽』を安請け合いしてしまう。
『事情』によって祝詞を詠み上げることのできない和洋。
そんな彼にキツイ態度を取る理子。
そして何かを企んでいるかのような、捻くれた豹真。
そんな三人の若者が主軸の青春物語かな……と思いきや、まさか異能バトル物としての一面が出てくるとは驚きでした。

長くはない文量と比例して、三人の交流は短い期間のものでした。
しかしその中で交わした言葉、感情、能力はとても濃い物語だったと思います。
手紙という形式で語られるストーリーは、能力者達の特異な生活の一片に見えて、その実、どこにでも存在しそうな多感な若者達の青春劇でもあったように感じました。
隠れた良作だと思います。