普段は高校生。バイトは死体の始末。
- ★★★ Excellent!!!
掃除人、それは殺人の犠牲者の処理を専門に行う者のこと。血痕を綺麗に洗い流し、死体を解体して闇に葬り去る……本作の主人公・斉藤大志は高校に通う傍ら掃除人である父の仕事を手伝うという二重生活を送っていた。
ある日、日直の仕事をしていた彼は校内で何者かに殺された猫の死体を発見してしまう。それを平然とスルーする大志だったが、その翌日には彼の机の中にハムスターの死体が入れられる。その犯人はクラスメートの牧田で、彼女は大志が普通の人間ではないことに気付いて自分が人を殺すために彼に近づこうとしていたのだった……。
殺人者のために死体の処理をするというヤバい仕事をしていながら、仕事明けにバスケ部の朝練に普通に参加するという倫理観を完全にマヒさせた主人公に、寡黙で何を考えているのかわからない父親、昔から死に惹かれて自分でも人を殺したいと願い始める同級生、そして次々現れる依頼人のシリアルキラーたち……とにかく出て来るキャラがとことん強烈!
異常者たちの異常な言動に振り回されながらも彼らを冷静に見つめる大志の淡々とした語り口が特徴的で、描かれている内容はグロテスクなはずなのに、そこまで嫌悪を感じさせずに読者を引きこむ独特な力がある一作。
(「悪い人たちの物語」4選/文=柿崎 憲)