kite kite クイック

　すっかりと終わっている地方の、さらに外れに位置する色あせた温泉街、浦和菓。ある旅館の息子がアメリカ留学から帰国する日、一機のセスナ機が旅館を目掛けて突っ込んでくる。
　それは息子本人であったが、墜落のあと気がつけばすっかりと記憶がない。
　父親や旅館館主たちは、殿村光央が持って帰るから！ と言っていた発明がなんであったのか思い出してもらわねばならない。
　その発明はこの街を、国を救うことを可能にするということだった。
　連夜の悪夢にうなされる光央は月明かりの砂浜で、海が光るのを目撃する。
　十数年も昔のあの日、父親は息子をなかば捨てるようにアメリカへと追いやった。父親は何を持ち帰らせようと考えていたのか。
　そして、町にクレマチスの香りが漂ってくる-----。

殿村光央　　長男。セスナで…続きを読む