知識と機転を活かした詐欺も、経験を活かした経営改善も確かにあるだろう。
だが、一番の魅力は個性的な登場人物達の掛け合いと、物語の根底にあるあたたかな雰囲気だ。
様々な問題が起こるが、シリアスになりすぎず何処かコメディなテンポで物語は進む。困惑しつつも、読み進めるといつしか笑みが溢れているのだ。時にくすりと、時に声を出し、時にほっこりと癒され、時に涙する。
珍しい設定なのに、どこか懐かしさを感じるあたたかな雰囲気。初めて訪れたはずなのに、「いつもの」と注文したくなる雰囲気。この物語は、そんな不思議な魅力で溢れている。
レビュー数を見ても、どれだけ愛されているかが分かるだろう。
騙されたと思って、『陽だまり亭』を一度訪れてみてほしい。
きっと何かを感じれるから。きっと楽しみが増えるから。
提示されたストーリーに接したとき、何をもって「癒された」と感じるのか?
いやね?
「たわわな谷間に顔を埋める」とか、
「掌に納まってしまうくらいの薄い膨らみを撫で回して」とかいうイメージで癒される事が無いとは言わないけれどね?
それだけだったら、「ぷるんぷるんで実は履いてません」なR-18とか、「この世界の美女美少女は全て俺の物だぁ!」なハーレム物とかがもっと席巻してても良い訳でね?
前者は抜きネタ足り得ても癒しとしては不足で、後者に至っては最近書き手の歪んだメンタルが透けて見えるようで食傷ぎみなのよね?
少なくともσ(´・д・`)は。
実際のところ、ストーリーによる癒しっていうのは、そこに描かれた「耐え難いダメージを受けた人物が癒されていく過程」を追体験する事でしか得られない訳で、
そういう意味ではこの作品は間違いなく“王道”を歩んでいる。
タイトルが「詐欺師」とか「なんちゃって」なのは些細な事で、『異世界転生や一人称主人公視点が流行りで安直』だなんて批判はどうでも良いことなのよ。
物語が始まる前に主人公は復讐を果たしてしまっているけれど、復讐を果たす事と「背負ってしまったダメージを手放す」事とは全く別の問題で、
だからこそ開始早々に復讐され返されて命を落とす。
さてそこからが問題で、異世界転生したからといって背負ったダメージはチャラにはならない。
現実世界でもそうなんだけれど、背負った物があまりに重いと、誰かに代わって背負って貰わないと本人が壊れちゃう。
だけど、「誰か一人だけに」背負って貰おうとすると、重すぎるが故にびびって逃げられてしまう。
でも、他の誰かの背負っている「なんだこんな事で」と思えるような所だけを代わりに背負ったり、逆に背負って貰ったりというのは、案外どうって事なかったりするんだ。
だからこの主人公は、「このお人好しどもめ」とか「利用しているだけだ」とか言いながら、本人にとってなんでもない事を軽々と背負う代わりに、その度に背負った物を少しずつ下ろさせて貰っている。
もしあなたが、この物語のどこかで目頭が熱くなるような思いを感じるなら、あなた自身が「本当はこうして欲しかった」という隠れた思いを抱えているからに他ならない。
あなたの周りを癒しで満たしたいなら、最初の一歩なんて実に簡単な事だ。
この物語を読んで、あなたが「良かったね」と感じた通りにすれば良い。
求めているすぐ目の前に答えはある。
因みにね、癒されきってしまった人には癒しを感じる文章って書けないの。なぜなら「のろけ」になっちゃうから。
癒しを渇望している人でなければ癒しを感じるストーリーって書けないんだけど、癒しを渇望していても世の人類を恨んでいるような人にはやっぱり癒しのストーリーって作れないんだね。
なぜ分かるかっていうと、
σ(o・ω・o)自身が、うっかりすると「読者の弱点をピンポイントで狙って止めを刺す」
ような文章を書いちゃうからなんだねぇ。
こういう人って、対人センサーのデフォルトが敵味方識別装置だから、出会った人物のディテールを覚えていられない。
地球の日本で詐欺師をやってた頃の主人公ってこんなだったかもしれないなだなんて、勝手に思ってたりもする。
主人公を始めとする登場人物に歴史を感じさせる厚みが無いと、「一緒に歩いて同じ景色を見ている」ような没入感は得られないんで、一見ご都合主義のように見えて『楽しくならない事は注意深く省いてある』だけの事はある。
この作者の作品って、処女作「おっぱいドラゴン」含めて癒しの要素を含まない物が無いのよね。
だから、「癒しを渇望しているけれども世を斜に見てはいない人」なんだと想定できる。
あくまでも想定できるだけね?
実際に合ったことは無いから本当の所は分かんない(w
こちらは異世界ものですが、巷に溢れた異世界物のテンプレ的な設定(冒険者ギルドや、スキル、チート、無双等)に逃げず、それらを使用しないで大変魅力的な作品となっています。
異世界テンプレ設定を使用しないとなると地味な作品になる恐れもありますが、当作品においてはそんなことはなく、地に足がついた世界観や、魅力的なキャラクター、テンポのいい会話、じんわりと来る展開、たまに見せる爽快感ある主人公の行動等が生き生きと書かれ、作者さんの技量の高さがわかります。
奴隷を買ってハーレムや、転生チートで無双展開、スキルのおかげで冒険者学校でうーはははー等ばかりになってしまったラノベ異世界物飽和状態の今、当作品のようなものは異端になってしまいましたが、戦闘や冒険を一切しない優しい世界の異世界物は、ラノベを一番最初に読んだときに感じた、ああこの世界に入って暮らしたいなあ、という思いを久しぶりに感じました。
どこまでも自分の事しか考えていない主人公が、自分の欲望のために突っ走る。その過程が人助けになったとしても、それは「たまたま」。決して主人公が人を笑顔にさせたいだとか、喜んでもらいたいだとか思っているわけではない。自分のためだ。関わった人が全員笑顔になろうとも、とにかくたまたまなだけだ。
テンポのいい文章、あっと驚く展開、かわいい女の子達(巨乳、ボクっ子、つるぺた虎耳、人魚など、各種取り揃えております)。
ラブコメ好きな人、獣人好きな人、異世界転生チート好きな人、詐欺師の手口に興味がある人、料理好きな人、つい嘘を言ってしまう人、困っている人をほっとけない人、飲食店で働いている人、面白い作品を読みたい人。誰にでもすすめられる一作。
特にラストの領主達とのやりとりはすごかった。何もかもが罠。