これは一つの癒しの形

  • ★★★ Excellent!!!

 提示されたストーリーに接したとき、何をもって「癒された」と感じるのか?

 いやね?

「たわわな谷間に顔を埋める」とか、
「掌に納まってしまうくらいの薄い膨らみを撫で回して」とかいうイメージで癒される事が無いとは言わないけれどね?

 それだけだったら、「ぷるんぷるんで実は履いてません」なR-18とか、「この世界の美女美少女は全て俺の物だぁ!」なハーレム物とかがもっと席巻してても良い訳でね?

 前者は抜きネタ足り得ても癒しとしては不足で、後者に至っては最近書き手の歪んだメンタルが透けて見えるようで食傷ぎみなのよね?
 少なくともσ(´・д・`)は。

 実際のところ、ストーリーによる癒しっていうのは、そこに描かれた「耐え難いダメージを受けた人物が癒されていく過程」を追体験する事でしか得られない訳で、

 そういう意味ではこの作品は間違いなく“王道”を歩んでいる。

 タイトルが「詐欺師」とか「なんちゃって」なのは些細な事で、『異世界転生や一人称主人公視点が流行りで安直』だなんて批判はどうでも良いことなのよ。

 物語が始まる前に主人公は復讐を果たしてしまっているけれど、復讐を果たす事と「背負ってしまったダメージを手放す」事とは全く別の問題で、
 だからこそ開始早々に復讐され返されて命を落とす。

 さてそこからが問題で、異世界転生したからといって背負ったダメージはチャラにはならない。
 現実世界でもそうなんだけれど、背負った物があまりに重いと、誰かに代わって背負って貰わないと本人が壊れちゃう。
 だけど、「誰か一人だけに」背負って貰おうとすると、重すぎるが故にびびって逃げられてしまう。

 でも、他の誰かの背負っている「なんだこんな事で」と思えるような所だけを代わりに背負ったり、逆に背負って貰ったりというのは、案外どうって事なかったりするんだ。

 だからこの主人公は、「このお人好しどもめ」とか「利用しているだけだ」とか言いながら、本人にとってなんでもない事を軽々と背負う代わりに、その度に背負った物を少しずつ下ろさせて貰っている。

 もしあなたが、この物語のどこかで目頭が熱くなるような思いを感じるなら、あなた自身が「本当はこうして欲しかった」という隠れた思いを抱えているからに他ならない。

 あなたの周りを癒しで満たしたいなら、最初の一歩なんて実に簡単な事だ。
 この物語を読んで、あなたが「良かったね」と感じた通りにすれば良い。
 求めているすぐ目の前に答えはある。

 因みにね、癒されきってしまった人には癒しを感じる文章って書けないの。なぜなら「のろけ」になっちゃうから。

 癒しを渇望している人でなければ癒しを感じるストーリーって書けないんだけど、癒しを渇望していても世の人類を恨んでいるような人にはやっぱり癒しのストーリーって作れないんだね。

 なぜ分かるかっていうと、
σ(o・ω・o)自身が、うっかりすると「読者の弱点をピンポイントで狙って止めを刺す」
ような文章を書いちゃうからなんだねぇ。

 こういう人って、対人センサーのデフォルトが敵味方識別装置だから、出会った人物のディテールを覚えていられない。
 地球の日本で詐欺師をやってた頃の主人公ってこんなだったかもしれないなだなんて、勝手に思ってたりもする。

 主人公を始めとする登場人物に歴史を感じさせる厚みが無いと、「一緒に歩いて同じ景色を見ている」ような没入感は得られないんで、一見ご都合主義のように見えて『楽しくならない事は注意深く省いてある』だけの事はある。

 この作者の作品って、処女作「おっぱいドラゴン」含めて癒しの要素を含まない物が無いのよね。

 だから、「癒しを渇望しているけれども世を斜に見てはいない人」なんだと想定できる。

 あくまでも想定できるだけね?

 実際に合ったことは無いから本当の所は分かんない(w