あたしを必要としてくれる人は、青い水をくぐり抜けた向こう側の世界にいた
- ★★★ Excellent!!!
大事なものなんて何ひとつないような毎日。
高校進学と同時に一人暮らしを始めたのは、
父が再婚したせいで家に居づらく感じたから。
派手めな友人たちとの付き合いもうわべだけ。
そんなマオを必要とし、強く喚ぶ声があった。
取り壊し間近の旧校舎のプールの向こう側、
異世界の王国、海に囲まれたシェルスフィア。
気付けばマオはずぶ濡れで“そちら側”にいた。
シェルスフィアの呪われの少年王、シア。
誇り高く、どこか危険な海賊船長、レイズ。
王命を至上とする謹厳な王国騎士、クオン。
守り守られる人々との出会いがマオを動かす。
「異世界トリップ・ラヴファンタジー
逆ハー要素あり、女性向け。」
と表紙に謳われる作品は、ほぼ初めて読んだ。
ラヴとハーレム要素と女性向けは苦手分野だが、
本作にはアレルギー反応が起こっていない。
マオが意味もなくモテるだけの話ではないからだ。
海に住まう神、王族の意義、人権や社会の在り方。
マオはひとつひとつを知りながら、自ら考え、
選んで行動し、大事なものの存在に気付いていく。
自分がこの世界にとって何者であるか知っていく。
15歳の少女が1人の人間として成長する姿と、
平凡な人間が神秘の力を自覚し会得する姿と、
読者はそれらを目の当たりにし、納得する。
これを間近に見れば、そりゃ惚れるよね、と。
神の加護を失い、呪いを受けたシェルスフィアに、
隣国アズールフェルとの戦争の危機が迫っている。
王の異母兄や“こちら側”出身の魔導士の思惑と、
姿を消した神々の意志に、マオはどう応じるのか。
神に近しい一族の末裔イリヤを得て船出し、
海神の一柱トリティアの意志と語り合い、
物語は今、緊迫感を増して目が離せない。
マオの成長と決断、恋の行方、世界の行く末、
これからクライマックスがどうなっていくのか、
更新を楽しみにしています。