アイより愛し~きみは青の王国より~
長月イチカ
プロローグ
プロローグ
―――――――…
小さな光の粒が、いくつも空へと吸い上げられる。
それは無数の水から生み出された光の雫で、空へと還っていくように、重力などまるで関係無いように、あの青に吸い込まれていった。
海の底に居るみたい。きらきら、涙が光と泡になって、消えていく。あたしのカラダも、一緒に溶けて。
光の柱の中、あたしはその手をとった。
「…どうして…お前なんだ…」
シアが、泣いてる。その青い瞳にあたしを映して。
離すまいと繋いだ手は震えていた。瞬きすらも拒むように、閉じることのない瞳があたしを射抜く。
痛いのに、逸らせないのは。
あたしもできる限りずっと、見ていたかったから。
ホント、泣き虫で、ワガママで、横暴で。
そして弱くて優しいこの国の王様。
シアの、そういうところが。
すごく、すごく…、
「おれは…っ お前が、望むのなら…この国も、未来も…この世界でさえも…!」
シアの涙が儚い願いに混じって風に乗る。それから周りのソレと同じように、ゆるりと空へと浮かんだ。
あたしはその雫の一粒を、そっと自らの手の平に閉じ込めて。
それからゆっくりとシアの目を見て笑った。
「大丈夫、そんなこと。シアに選ばせたりなんか、しないから」
君が選ぶ未来は、ひとつで良い。
たったひとつ。
それだけで。
―――――――…
――――――――――…
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