本格派の近未来ファンタジー小説
- ★★ Very Good!!
読み始めてすぐに、この小説がライトノベルを志向せず、一般小説を目指して書かれている事に気づかされます。古典的ともいえる硬質な文章ですが、それが心地よいです。
過剰に説明せず、読者の想像力が羽ばたく隙間が用意されているこの文章力は素晴らしい。乾いた空気、すえた匂い。特に書かれていないにも関わらず、ちゃんとそれが伝わってきます。これも作者の力量でしょう。
設定もとても面白いです。一般的に異世界物は、異世界に吹っ飛ばされた人の視点で描かれる事が多いのですが、このお話では吹っ飛ばされてきた少女を守る中年のおじさん、ダレルの視点で紡がれています。
異世界になじんでしまっている人の視点ですから、異世界とは言ってもダレルにとっては現実です。それなのにちゃんとミサキの戸惑い、世界の異様さが伝わってくる。
これは襟を正し、正座して読まなければならないと思いました。
まずは第一話読了後にこれを書いていますが、どんな冒険が待っているのか楽しみです。