スピリチュアルの響きが紡ぐ

 超能力者の少年と彼らを管理する青年が、能力者が絡む窃盗事件の解決に挑むという物語。
 モチーフの使い方が上手い。それぞれの登場人物がマイノリティとして過去に何かしらを背負っており、そんな彼らが自分のあるべき居場所を求めようとする切実な願いが、黒人霊歌『スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット』を通して一つの物語として繋がっていくその様は、作品そのものが端正のとれたメロディラインのようであり、読後にはちょっとしたバンドの演奏を聴き終ったような感じさえある。これはファンタジーなどのでっち上げではなく、歴史的背景を持つ実在の音楽を効果的に使った強みに他ならない。
 また、現在進行形で進む日本の物語と回想でのアメリカの物語が交互に描かれるのだが、日本の描写はもちろんアメリカの描写も上澄みをすくっただけでなく情景を思い浮かべられるようリアリティがあり、さらに会話のリズムも日本パートとアメリカパートで変化に富んでいて、それが偽りのない物語として読者に提示されている。

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