アガルタの守り人.5

地下深く部屋に、女がふたり。

一人はシオン。哀れにも睡眠薬を盛られてしまった、ただの怖がりの女の子。
もう一人はサクラ。もう大人で、夜にも起きていていい人間。

サクラは、シオンがぐっすりと眠っているのを確認すると、ドアの向こうの物音に耳を澄ませた。

かすかに、しかし、確かに、物音がする。会話の音と、足音。
幽霊の音だ。地の底に送られた祖先たちの幽霊だ。

彼らに襲われてしまうから、このドアを開けてはいけない。そう、所長が言っていた。サクラは今まで、忠実に守り続けていた。
今日、彼女は幽霊の正体を暴こうとしていた。

彼女は、シオンが眠っているのをもう一度確認すると、そっと部屋の扉を開けた。

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