アガルタの守り人.1


墨天坑には幽霊が出る。
人類が地の底で過ごした数世代、子を産んだ親は、墨天坑の一番底に連れていかれ、二度と上がってくることは無かった。
現在、愚神派研究所がある場所のさらに深い底である。
其処で何があったのかは、記録に残っていない。しかし、信憑性が高い噂は広まっている。

皆、そこで殺されたのだと。未来の人類が生きるため、食料を節約するために犠牲になったのだ、と。
彼らの幽霊は、地上に死者が出た時に現れることが多いとされている。

キャラバン隊は犬を飼い、新世界を遠くまで旅して食用植物を探している。犬が食べられるものは、人間にも消化できる可能性が高いからだ。犬を飼うため、また、ガイド役の新人類への報酬として、ほかの人々よりも多くの(携帯食料)エナジーバーを消費してしまう。幽霊たちは、これを憎んでいるのだろう。
 塔台守たちは宇宙にメッセージを流し続け、太陽光で発電する。幽霊たちは、自分たちが見ることの叶わなかった空を見る塔台守たちを羨んでいるのだろう。


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