• 現代ファンタジー

三島由紀夫が自分に教えてくれたもの

なんか最近全然ミッドナイト•ランブラーを更新出来てないので(ちゃんと続き書いてますよ。ただ今回は久しぶりに長めのエピソード書いてるので、時間くっちゃってます)個人的に一番好きな作家の代表作の出会いや自分の人生にあたえた影響についてでも、代わりにここで書くとします。

三島由紀夫に初めて出会ったのは自分が中学1年か2年の時でした。名前は元々知ってました。国語の授業中にテキトーに開いた、日本人作家の一覧とその情報が乗ってるミニ図鑑を開いたんです。そしたら彼の射抜くような目と目が合い、その瞬間に彼に興味を持ちました。「こいつ、他の作家と雰囲気が違う」中二病真っ盛りの自分は直感でそう思ったんです。

目線を移して彼の情報が書かれた文章を読んだ瞬間、自分の目を疑いました。自衛隊基地に乗り込んで切腹して自ら命を絶っただと⁈そんな死に方聞いた事ないぞ!

こいつ、イカれてる。自分はそう思い、どうしても彼が生前書いた作品を読んでみたいという欲求を抑えられなくなりました。中学生が彼みたいな毒のある作家に興味を持つのは当然の反応でしょう。

運良く父親の本棚に彼の代表作である金閣寺を見つけた自分は、失敬して金閣寺を読み出しました。

その瞬間、私の世界は変わったんです。

男性だけが持つ、残忍で冷酷な悪魔的な部分…そんな異常な部分をここまで美しく描く事が出来るなんて…!私の中にある常識は破壊しつくされ、新しい価値観が私の中で生まれるのを確かに感じました。

世間一般的に醜いとされる感情を掬い上げ、それを独自の美学と哲学へと昇華する、その錬金術的手法…。彼は本当に人間だったのか?悪魔か何かだったのではないのか?そういう突飛な夢想までする始末でした。

世界に対する憎しみ、破壊衝動、力への憧憬、女性に対する冷淡な態度…それらは自分の中にも確かに存在していました。でもこんなところで悶々としついる自分とは異なり、彼はそれらを自覚し、誇りにしている。ああ、こんな風に生きられたらどれだけ素晴らしいか…!

個人的にあの小説のハイライトは、主人公が妊婦の腹を蹴っ飛ばして流産させるシーンだと思います。あの一連のシーンは言葉では言い表せないくらいにエロティックで、読んでいるだけで恍惚とします。

で、それから時を経て現在。もはや私はかつての私とは異なり、自分自身の感情を自覚し、言葉にする術を会得する事が出来ました。ならやるしかないでしょ!と思って色んなところに自分の書いた小説を送ってみましたが…予備審査まではいくものの、何故か賞を受賞出来ません。

最初はただ単に自分の力量不足だからと思っていましたが(というより実際昔自分が書いた作品はクソ過ぎて、とても読み返す気になりません)次第にあれ?悪いの俺じゃなくて?と傲慢ながら思うようになりました。え?だとすりゃなんで自分は賞を受賞出来ないんだ?

考えた末に導き出した結論は、編集者が日和見主義の臆病者だからというものでした。んじゃさっさと見切りつけてカクヨムででも発表するか。と思って自分は今ここにいます。

拙作ミッドナイト•ランブラーの主人公である月海夜行は、サディストで女性を見下してて、ルールを破り、片っ端から女に手を出し、敵を拷問してから面白がって殺す。もう救いようのない悪人です。でもその一方で彼には確かに優しさがあり、弱きを助け強きを挫く仁の人でもある。そんな彼が傷つき、踠き、葛藤しながらこの汚濁に塗れた現世を生き抜き、世界を断罪していく。私は彼が美しい存在であると信じて疑いません。だから、なんとしてでも彼の物語を描き切りたい。その瞬間、作者である自分自身も成長出来ると信じています。

私はもう傷つきやすい十代の少年じゃない。純粋な悪こそ最も美しいと、三島が教えてくれたから。彼と自分自身を信じて突き進むのみです。三島のバイブルであった葉隠にも、武士道とは死ぬ事であり、一度決めたなら覚悟して突き進むのみだと書いてありますからね。

思った以上に長々と書いてしまいましたが、要するにミッドナイト•ランブラーを読んで欲しいという宣伝でした。はい。

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