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 誰だ? ベトナム人に卑猥な言葉を教えたやつ。

 昨日、打設(コンクリートを型枠に流し込む事)の段取りで現場の責任者の人が、
「バイブレーター使う人はセメントの硬さをチョン(↗︎)チョン(↗︎)って見てやってね」

 と言い、僕らの長が、
「バイブの人はチョン(↗︎)チョン(↗︎)」

 と言った。すかさず僕は、
「バイブでチョン(↗︎)チョン(↘︎)ですね?」

 と口を挟み、僕らの長も僕の意を汲み取って、
「そうそう、バイブで〝ちょんちょん〟」

 と返してくれた。
 現場に、男達の下卑た笑いが、木霊する。
 しかし僕は「しまった!」と思った。
 何故ならそこにはベテランであるとはいえ、日本語はまだまだカタコトのベトナム人「アイン先生(仮名)」がいたからである(ちなみに別の会社の人)。「ちょんちょん」などという児童スラング、彼には伝わらないだろう、そう思ったのだ。
 だが、アインは笑っていた。

 ——まさか、「ちょんちょん」を認識してるのか?

 余談であるが、カタコトで日本語を話す外国人を純朴そうな人として見てしまう「カタコト補正」というものを僕は常々感じている。
 だから僕はアインが「ちょんちょん」で笑ってる姿を見て、意外に思った。

 僕は確認の為に自分の股間を指差し、
「アイン、ここは何?」

 と訊くとアインは、
「ちんちん」
 
 と答えた。

 ——「ちんちん」も知っているだと? 一体どんなシチュエーションで覚えたんだ?

「じゃあアイン、〝ちょんちょん〟は何?」
 僕が再度訊く。

「それは——フフッ、オンナのやつだヨォ!」
 アインが笑顔で、そう答えた。

 下ネタは世界を繋ぐ。
 少なくとも、男の世界は。

 終わり。 

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