• 異世界ファンタジー
  • 歴史・時代・伝奇

21「昭和15年10月、深まる戦時色」補足


1.産めよ育てよ

 公開したときは「産めよ殖やせよ」になっていました。
 しかし、これは翌年の言葉でしたので訂正をしました。

 昭和14年9月に厚生省が結婚十訓を提唱しました。その中に、「生めよ育てよ」というのがあります。

 現在、強制不妊手術が問題になっていますが、「国民優生法」が昭和15年3月に制定され、精神疾患や知的障害の方の不妊手術が推進されました。これが後に問題となっている「優生保護法」になっていきます。
 また一方で健康な人に対しては中絶や不妊を制限することとなりました。
 そして昭和16年に「人口政策確立要綱」が閣議決定され、そこから「産めよ殖やせよ」というスローガンができるのです。
 作中に書くかどうかわからないので、ここに書きますが、昭和17年7.13には妊産婦手帳が始まり、いわゆる母子手帳が始まります。

 私の書き方として、一度ざっと書いて、公開前に見直して大幅に改訂するという手順を取っています。
 で、メインの執筆の方が昭和17年時点に来ているので、見直しの際にうっかり「産めよ殖やせよ」を入れてしまった次第です。
 最初は何気なしに始めたこの補足コーナーですが、さらに見返す切っ掛けになるので、よかったかも。


 なお結婚十訓は次の通り。

1.一生の伴侶として信頼できる人を選びませう。
2.心身共に健康な人を選びませう。
3.お互に健康証明書を交換しませう。
4.悪い遺伝の無い人を選びませう。
5.近親結婚は成るべく避けることにしませう。
6.成るべく早く結婚しませう。
7.迷信や因襲に捉はれないこと。
8.父母長上の意見を尊重なさい。
9.式は質素に届はすぐに。
10.生めよ育てよ国のため。

 この十訓ももとはナチスの配偶者選択10ヵ条が手本だったとか。

 日本って、帝国憲法自体もそうですが、ドイツからの影響を受けすぎていた気がしなくもないです。


2.節米
 白米禁止令は作中の通りですが、朝鮮で凶作になっただけが原因では無く、そもそも、この頃の日本は白米ブームで年々、消費量が増え続けていたのです。(これを書かなかったのは、春香の立場ではわからないことだから)

 昭和15年の春からはインディカ米を混ぜて販売されています。
 さらに同年8月には、東京のレストランではお米のご飯の販売が禁止され、以後、カレーもカツ丼も節米混ぜご飯も出せなくなりました。

 このあたりのネタは次の書籍です。

 齋藤美奈子『戦下のレシピ 太平洋戦争の食を知る』(岩波現代文庫)

 節米の事情や栄養のこと、炊くときに水引きが悪いとか、節米の3種の方法もみな、この書籍を参考にしています。


※かつて天皇陛下が皇太子時代に、故プミポン国王から食糧事情の悪さを相談され、その際にティラピアを紹介され、また自ら飼育されていた50匹を送られたのです。これが養殖されて、タイの食糧事情の改善に役立しました。この品種がプラ―ニンと呼ばれています。
 平成5年に日本は冷夏となりました。この時、この陛下の友誼に対し、タイが緊急輸入をしてくれたのが、上記インディカ米でした。
 私も食べたことがありますが、私はおいしいと思いました。インディカ米はインディカ米としてのおいしさがあるかと思います。
 ずっと後でこのエピソードを知り、大変に感銘を受けた覚えがあります。
 なので、私の作品でお米の記述が出てくる場合でも、わざわざインディカ米とジャポニカ米を対比させるような記述はしないつもりです。
 願わくば、陛下の築かれた日本とタイの友誼が損なわれることの無いように祈りたいと思います。


2.興亜奉公日
 国民精神総動員運動の一つとして、昭和14年9月1日から、毎月1日が興亜奉公日とされました。
 この日は、神社にお参りしたり、ぜいたくをやめ、日の丸弁当で我慢しようという運動です。
 後に、太平洋戦争がはじまると、真珠湾攻撃の行われた8日に大詔奉戴日として統一されます。

 興亜パンは前述『戦下のレシピ』から、家畜飼料だったのでしょうけど、なぜにパンに魚粉をと思いました。
 魚粉はさらに研究が加えられ、戦争も末期的には無味無臭化に成功とか。(戦下のレシピp136)


3.贅沢品の禁止
 通称7・7禁令(『奢侈品等製造販売制限規則』)です。
 wikiによれば、軍需景気により成金が発生し、高級品の売れ行きも好調だったとか。それに対する庶民の反感をなだめ、銃後の引き締めのための規則って。まあ、わからなくはないです。

 この翌月に現れた看板が有名な「ぜいたくは敵だ」ですね。

 ちなみに皇紀2600年を祝うポスターとして、「祝へ! 元気に 朗かに」が張り出されました。が、行事が終わるやいなや、次の日からは「祝ひ終った さぁ働かう!」(大政翼賛会)というポスターになりました。

4.弓6823部隊
 通称号「弓6823部隊」は第33師団下の歩兵第214連隊です。
 次の転の章をお待ち下さい。(……多分)

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する