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太鼓の音が響き渡る

ファンタジーの原典とも言える“ロード・オブ・ザ・リング”の一節。
ドワーフの坑道「モリア」で亡くなっていたドワーフの一人が抱えていた手記に書かれていた。

ワレラ出ズルコト能ハズ。イマハノ時来ル――太鼓ノ音、深キ所ヨリ太鼓ノ音――今ヤカレラ至レリ。

このシーズンは近所の学校から太鼓の音が響いてくる。
自室で物思いにふけっているとき、この太鼓の音を聞くとなぜかロード・オブ・ザ・リングのあのシーンが蘇ってくる。

この音はきっと、運動会の練習をしている音に違いないのだが、自分の脳内世界では坑道の奥底から地獄の炎を伴ってオークやトロルと共にバルログが現れる。

「あ、これ、死んだな」

と思わせるほどのオークの数と、赤い発光と共に現れるバルログが衝撃的で印象に残っているのだ。
きっと小学生が鬼のような悪魔のような何かから全力で逃げ回ることで体力を向上させ、遊びながらにして心身を鍛えるという妙技を会得していることだろう。

世の中は平和だ。
しかし、自分の心の中は不和でいっぱいになる。
既存の世界観を超えるファンタジーを自身の内側から吐き出せる日は来るのだろうか。
その物語に魅せられた時から、自分の想像の限界はそこで止まってしまっている。
もはや現代の既知から物語を紡ぐことしかできないことに、自分の弱さと無力さを感じずにはいられない。
いつの日か、どんなに年を取ったとしても、新しい世界の幕開けを果たすときまで。

本当に描きたい物語は、まだ心の中にしまっておく。

だからこそ、今日も執筆は進まない。

4件のコメント

  • 地元でもこの時期には太鼓の音が聞こえてきたんですよ。夜中に。そう、太鼓の音の出どころは小学校ではありません。地元の春まつりの練習で太鼓が鳴り響いていたのです。

    ですが、このご時世でしょう。お祭りも出来ませんよね。なので去年と今年は静かな5月の夜となっております。淋しいなあ。来年は太鼓の音が響き渡っているようになっているといいな。風物詩ですからね。
  • 祭りもろくにできない、さみしい時代ですよね。
    時代と言ってよいのかわかりませんが、コロナで様変わりしすぎてもはや新たな時代とも言える気がするのです。
    でも、街を彩る笛の音が、太鼓の音がとても待ち遠しいですね。
  • “ロード・オブ・ザ・リング”
    このタイトルをここでお聞きするとは。私も影響を受けた作品です。ファンタジーの原点にして到達点ですね。
    思わずコメントしてしまいました。

    バルログと運動会する小学生。
    将来、何があっても大丈夫でしょう。心強いですね。

    お互いに良いファンタジーが生み出せるよう、エアレンディルの光が照らしますように。
  • Far East Archives様
    コメントいただきありがとうございます! とてもうれしいです笑

    ロードオブザリングが私の出発点なので、いつの日か超えられるような作品を作りたいと考えていますが……まぁ、目標は高く高く、のつもりで永遠に戻ってこない高いたかーいをしているような気分になりますが、努力はしたいものです。

    きっとあの悪魔に打ち勝てるほどの炎の使いなのでしょう。

    サウロン様に焦土に変えられないよう頑張りましょう!
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