こう見えて、日頃の業務は忙しい。
慌ただしさの中に癒しはない。
男は今日も、同僚の家に泊まる。男の職場は、自宅から2時間ほどかかるところにあった。今日のように多忙な日は、だいたいその同僚の家に泊まるのだが、この同僚、なかなかどうして、変である。
いや、泊めていただいている身分で偉そうな事は言えないが、泊めていただいているからこそ、つくづく変であると言えるのである。
彼はダイエット中である。大少年とかいうハンバーグが売りの店に行くと、決まってサラダバーしか食べない。
ハンバーグの店なのに、サラダバーのみとはいかがなものか! と、物申した。
男は彼に不満のフを伝えたが、彼は男に、肥満のヒを伝えてくる。
これは男も太刀打ちできなかった。
カレーのおかわり自由が男を呼んでいた。
にもかかわらず、男のカレーを持つ手は震えていた。あまりにも震えたため、店員さんが心配そうな眼差しで見つめてきた。
男は席につき、肥満のヒを食していると、同僚もカレーを持ってきた。
お前も結局カレーじゃないか!
しかし、その視線の先には、米ではない何かが黄土色の香ばしい海の中に沈んでいる。
それは、サラダの山であった。
その光景に、男は言葉を失った。
野菜カレーではあるけれども。
野菜カレーでは、あるけれども!
結局、食事も会話も捗った。
多忙な日常に、同僚たちとの外食はストレスを発散するための、明日への糧となった。散々サラダしか食べなかった同僚だけが、満足げのない表情をしていた。
それもそのはずだ。
人の欲望とは、満たすためにあるのだ。
我慢をすれば、いずれボロは出る。
不満のフを貯めれば貯めるほど、肥満のヒに火がつくのだ。
同僚は家に帰ると、今日もポテチを食らっている。
彼の観察が日課となっているため、今日も執筆は進まなかった。