男は梅酒を飲んでいた。
梅酒といっても、ただの梅酒ではない。その滑らかな舌触りと甘美な香りを漂わせ、それは、艶かしくも美しく、それでいて奥ゆかしい女性を思わせるかのような芳醇さを感じていた。
しかし、その艶やかな色彩が失われたのは、男のたった1度の過ちからであった。
過ちというものは、すぐさま取り返しのつくものではない。
ましてや、男の過ちなど、罪悪感に罪悪感を上乗せしても未だ取り返しのつかないことこの上ないのである。
この罪悪が後を引き、やがて数多くの艶かしくも美しき女性たちを悩ませ、恨ませ、困惑させ……やがては崩壊させていく。
それほどまでにその罪の深さは拭えないものである。
男は過ちを犯した。
彼女はそのままでも美しく、芳醇で、美味であった。
その美味たる容姿に魅入られて、鼻腔で、舌先で、飲み込むように喉の奥でその麗しき甘美を嗜み、やがては全身へと、その感覚は駆け巡っていく。
その快楽に、男は少し刺激を求めすぎてしまっていたのだ。
刺激を求めれば求めるほど、溺れていく。驕っていく。
傲慢なまでにその欲望を押し付け、その真紅を汚していくのだ。
それが、過ちであると気づかずに……。
男は、梅酒にコーラを注いでいた。
執筆は一向に進まなかった。