「これは、いったいナニ?」
刀木は蓋を開けた巨大な弁当箱を、ドングリ眼で注視する。
ノリゾーも蓋を開け、小さな小豆のような目をショボつかせた。
弁当箱には、ギッシリと炊き立てのササニシキが詰めこまれているのだが、問題はその白米の上であった。
「か、かあちゃんが、ご近所の奥さんたちに教えてもらったんだって」
「ナニをよ?」
「キャラ弁の作り方だって言ってた。
この頃では、お握りなんかをオブラートに包んで、その上から食紅でキャラを描くんだって」
「キャラ弁っていやあさ、良い子たちの大好きなアニメのキャラクターだろ、普通は」
「うん、そう。
でもアンタもいいオトナなんだから、アニメなんて観ていたらダメだって、かあちゃんが言ってた」
「それにしったってよ、ノリさんや。
これは、ちとマズイんでないかい。しかも実のおっかさんがセガレに教えるってえのも、どうよ」
「かあちゃんは、これで社長と勉強しなさいって」
ノリゾーは真面目な顔で弁当箱と刀木を見る。
「いや、勉強って言われても、わたしはすでにほとんど体験済みだしなあ」
「ええっ!
さ、さすがはキャバクラのお遍路さんと呼ばれるだけはあるんだなあ」
「ちょっと待って。なに、そのキャバクラのお遍路さんて?」
刀木は巨大弁当を前に腕組みした。
そこにはなんと、男女が “ やんごとなき ” ことをいたす姿が、24組描かれているのであった。
「わたしのとノリゾーの分を合わせて、いわゆる『四十八手』って言われる体位じゃんよ」
「そ、そう。
ええっと、まるでアクロバットだなあ」
「これが、その一で “ 立ちかなえ ” だろ。お次が “ 千鳥の曲 ” だっけ。
しかしまあ見事な筆さばきでいらっしゃるわ、おっかさん。
食紅で描いたなんて、とても思えないな。
写真だよ、これ。はあ、凄いわ」
刀木とノリゾーは弁当箱を覗き、指さしながらしゃべっている。
淫猥な目つきの刀木は、食欲すら忘れたかのようにノリゾーに解説する。
その様子を事務所の入り口から覗いていたのは、唯一のアルバイトで現役の女子大生むつみであった。
むつみはコワイものをみるような、引きつった面持ちでつぶやく。
「絶ッ対に、辞めてやるわ!
昼間っから卑猥な談義に花を咲かせる、こんなオゲレツな会社なんて。
人畜無害のノリゾーさんまで一緒になんて、どういうことよ。
あっ、そうだわ!
酢にマジ酒割れば、吐かなくなる?
ハッカは両さんを愚痴愚痴言う?
あれ、違うか……
まあいいわ。それよりも、あたしの貞操の危機よ、ここにいたら」
むつみはスウッと入り口を閉めるのであった。
「その後、むつみさんが退職したと言う話は聞いておりません。
すでにパーフェクトに、カタナギビューティ色に染められていたようです。
ちなみに、酢ではなく、朱に交われば赤くなる。ハッカではなく、悪貨は良貨を駆逐する。こちらが正解。
今日のお相手は、貴井中一でした」
~~♡♡~~
またもやオフザケなお話で、大変失礼いたします。
いったい、つばきはどこへ行こうとしているのか、まったくわからないですわねえ。
カクのかヨムのか。
長編なのか短編なのか。
お涙頂戴なのかお笑いなのか。
そうですわ!
コロッと忘れておりましたけど、拙作「農協のATM」が都市伝説の自主企画で、『参加賞』なる賞を頂戴いたしました♡
内容でいただいたわけではありませぬ。
単にクジ運が良かっただけでございます。
でも、お目通しくだすった皆さま、ありがとうございます!
「貰う、拾う、タダ」を信条といたしておりますゆえ、嬉しい♡
そしてそして。
拙作にお★さまにレビューを頂戴いたしました。
これは何よりも嬉しゅうございます!
「農協のATM」
糸乃 空さま、お★さまをいただき誠にありがとうございます!
「二十歳のおばあちゃんへ」
一矢射的さま、「人生は儚く、だからこそ美しい 」のレビューとお★さまをいただきまして、誠にありがとうございます!
@davidvilla07さま、初めまして♪ お★さまを頂戴し、誠にありがとうございます!
「魔陣幻戯3 『千年魍魎』編」
空っ手さま、「スピンオフでも、無類の面白さは健在……!!」のレビューとお★さまをたまわり、誠にありがとうございます!
「夜空いっぱいのシューティングスター」
一矢射的さま、「粋だねぇ、サンタって奴はこうじゃないといけねえ!」のレビューにお★さままで頂戴し、誠にありがとうございます!
SNSもやらず、細々と自己満足のみで活動いたしております。
それでもご覧くださるかたがいらしてくださり、わたくしは心より感謝いたしております。
乱歩先生を心の師としながらも、オフザケ物語しか描いてはおりませぬ。でも、こんなつばきのお話でもよろしければ、今後ともご贔屓にお願い申し上げます♬