「ギョ~ザッ、ギョ~ザッ、フンフフ~ンッ」
わたくしはいつもの、そそとした淑やかな歩みではなく、いわゆるスキップなるリズムで、町内の商店街を跳ねるように進んでおります。
「三日に一回ッ、ギョ~ザを食すッ、ウッウウンッ、わったくしは、ハ~ン、ギョ~ザ・ガ~ルッ、フ~ッ」
などと自身で作詞作曲いたしました、「ギョ~・THE・ガ~ル」を軽やかに歌いながらウキウキ気分にひたっております。エイト・ビートよ。
途中すれ違うかたがたも、手拍子を送ってくれます。
いつもの中華料理屋さまは、あと少し。
お店の入り口のガラスドアに『自動扉』の張り紙を発見し、わたくしは華麗なるステップで店内へ。
ゴイィ~~~ンッッ!!!!
…………♡…………
「タカオさん、たいちょぷあるか」
お店のオーナーシェフ(あ、生粋の日本人でいらっしゃいます)さまは、カウンターで肘をついて氷入りのグラスを富士額に押し当てておりますわたくしに、心配そうなお声をかけてくださいました。
「まさか、いきなりアタマからトアに突進してくるお客さんいるとは、ピックリね」
ただ、必死に笑いをかみ殺していらっしゃるのは、明白でございます。
肩がプルプル震えていらっしゃるから。
「アイヤァ、てかいタンコプあるなあ。イタイあるか」
「えっ、ええ。もちろん、痛うございますわよ」
わたくしはこの歳で額をぶつけて半泣きになるだなんて、思いもしませなんだ。
「なしぇ、いつもみたいにトアを手て押して、入ってこなかたあるか」
「い、いえいえ、ご主人さま。だってドアに『自動扉』って張り紙が」
ご主人さまは入口に視線を向けられました。
ガラスドアに貼られた紙を裏側から見て、首を傾げられます。
「あれ? 一枚ないあるな」
「はっ? 一枚ない? ある? どっち? なにが」
「わたしの子ともね、カッコウてシュウチならったよ」
「は、はい学校で、習字ですわね」
「そうあるな。『風』という文字ね、いたくお気に入りとかよ」
「まあ、確かに格好よございますわねえ」
「それて、家に帰ってきて『欧風』と書いたのよ。
意味を訊かれたから、それはヨーロッパの真似っこってことよ、って教えたあるよ』
「はあ、まあ当たらずもとも遠からずかしら」
「そしたら子ともかさ、お店のトアも『自動扉風』たね、言うのよ」
「はい?」
「ほら、ウチは手て開け閉めするからさ。カラストアたけとね」
いやいや、そのナントカ風はわかりますれど、『自動扉風』って意味がわかりませぬ、意味が。
「それてさ、子とも書いたよ。たた文字の大きさ、まちかえてさ。
『風』が一枚に入りきらなかったね。
たからもう一枚に『風』と書いて貼ったあるよ。『自動扉』『風』とね。
そしたら、なになに、かしぇに吹かれて『風』がとんていったあるか。
こいつは傑作よ、ウワッハッハ」
お待ちになって、ちょっと。
ダジャレに喜んでいる場合ではございませぬ。
わたくしの綺麗な富士額に、でっかいタンコブができておりますのよ!
とは申せ、わたくしは餃子を十人前いただいて、機嫌よう帰途につくのでした。
皆さまも『ナンチャラ風』やら『カントカ風味』にはお気をつけくださいまし。
屋敷のリビングにて、カクヨムさまをチェックいたします。
ゲプッ! あらやだ、ほんのりニンニク臭のゲップが……
あ、「夜空いっぱいのシューティング・スター」にレビューを頂戴しております!
桜井今日子 さま、
今日子ちゃ~ん、年末前のご多忙なときにお目通しくださって、誠にありがとうございます! しかも応援コメントに、お★さま、そして素敵なレビューまで♪
感涙ストーリーだなんて、嬉しい♡ そう、まもなく一年ですわねえ、親父っさんとトナちゃんのお話を紡いで。胸いっぱいのシューティング・スター、こちらのほうがタイトルにいいかもぉ☆
今日子ちゃんも、ステキなクリスマスをお迎えになってね。
心より御礼申し上げます♬