庭園にビーチソファを持ち出して、ちょいと大きめのパラソルを立てます。
ようやく陽射しが和らぎ始めたこの時季は、読書にはもってこいって感じですわね。
わたくしは乱歩先生の「押絵と旅する男」を読みながら(本当はすべて暗記しておりますのよ)爽やかに吹きすぎる風の音を耳にいたします。
おや、屋敷近くにございます幼稚園から、先生のお声が聴こえますわ。静寂な邸宅街ゆえ、こんなゆったりと風が舞う日には、時おり聴こえて参りますのよ。
『はい、みんな席についてくださーい。
今日はお絵かきをしましょう。
机の上にクレヨンを出してくださいね。先生が今から画用紙を配りますから。
あっ、タロウくん、お弁当じゃなくてクレヨンね。そうそう。
ハナコさんはクレヨンどうしたの? えっ! 食べちゃった?
ああ、先生驚いたわ! 食べちゃったのはお弁当ね。クレヨンはカバンの中にあるのね。
でもいつの間に食べちゃったのかなあ。まだ十時前なのに。
えっ? もうひとつ持ってきてるから大丈夫って?
よかったわね、お母さんが優しくて。
でも今からそんなにいっぱい食べてると、お年頃になったら困るかもよ。ポッチャリさんになって。
独身の長い先生に言われたくない? そうね、失礼しました。
ジロウくん、クレヨンはそうやってお鼻や耳に入れるものではないでしょ。取れなくなっても知りませんよ。
ヨシコさん! ジロウくんが鼻に入れたクレヨンをさらにねじ込まないの!
みなさん、準備はいいですか。
それでは今日はみなさんのおじいさま、もしくはおばあさまのお顔を描いてください。
もう少ししたら敬老の日よね。その日はみなさんが描いた絵を園内に飾って、おじいさまやおばあさまに観にきていただきますから。
上手じゃなくても構いません。みなさんが一生懸命描いてくれたら、それが一番よ。
はい? サブロウくん、質問かな。どうぞ。
そうですね、みなさんもおじいさま二人と、おばあさまも二人いらっしゃるかと思いますけど、できれば四人、もちろんひとりでもいいわよ。
ハルミさん、ハルミさん? どう見ても十人以上のお顔の輪郭ね。
えっ? 家庭が複雑でおじいさま、おばあさまとお呼びするかたがたが十三人いらっしゃるの?
それなら頑張って描いてみましょうか。そこまで先生は介入する権利はありませんし。
シロウくん、どうしておじいさまの頭に包丁が突き刺さってるのかしら。
昨日の夜、おじいさまとおばあさまが喧嘩なさったって?
おじいさまは一命を取り留めて、何事もなかったかのように朝から畑へ、お二人で仲良く野良仕事にいかれたのね。
じゃあ、包丁は消しましょうね。他のかたが観たら何ごとかと思うでしょ。
ケイコさん! あなたはもしかしたら天才児かも!
クレヨンでそこまで細かく表現するなんて、凄いわ。もう幼稚園児のレベルの範疇を超えているわよ!
二科展でもトップクラスの腕前と評価されるわ、間違いなく。
でも、できたらおじいさまの、あらわになった裸像はやめましょう。ちょっとリアルすぎて、先生引いちゃうから』
園児たちは本当に純真無垢なのね。微笑ましいかぎりですわ。
ちょっと休憩して、ティ・タイムにいたしましょう。
どれどれ、カクヨムさまをチェックです。
マッ! 拙作「猟奇なガール」にレビューをいただいてるわ!
七柱雄一さま、
初めまして!
この度はご多忙の中お読みくださり、さらに素敵なレビューを頂戴し、誠にありがとうございます!
どうぞ、病みつきにならぬよう祈願いたしております。
少しでもお笑いくだされば、これほど嬉しいことはございませぬ。
心より御礼申し上げます。
エッ! 拙作「明日へ奏でる草笛の音」にもレビューをくださってる……わたくし、初体験でございます。
七柱雄一さま、重ねがさねありがとうございます!
拙作を続けてご覧くださるなんて、嬉しい♡
ラストの一行、つばきは魂をマジに込めましたの。それを汲んでくだすって感無量でございます。
こんな猟奇なわたくしでございますれど、どうぞ今後とも宜しくお願い申し上げます♡