町内会が公民館で開催されましたの。
本日の議題はズバリ、「夏の恒例・妖魔撲滅期間到来」でございます。
夏も盛りになりますと、いたるところに妖魔が湧いてきますゆえ。
もちろんわたくしが実行役員として、議事進行を仰せつかっております。
ごほん、えーっみなさま、お揃いのよ……
あのう、町内会長。少々お尋ね申し上げます。
今年の「夏の恒例・妖魔撲滅期間到来」は、町内の中でも腕に覚えのある、ツワモノを選ばれたとお聴きしておりましたのですが。
えーっと、ここにお越しの皆さまは、そのう、つまり、はっきり申し上げますと、かなりお年を召したかたが多いような。
わたくしの気のせいでございますでしょうか?
はあ、平均年齢八十七歳? 一番若いおかたで七十二歳、最高齢は九十八歳そうおっしゃいましたのかしら?
十代後半から三十代までの皆さまは、大須で開催の「世界コスプレ・サミット」に向けての準備でご参加できない、ということでございますの?
さようでございますか。妖魔退治よりも、コスプレが大事と。
ただ、妖魔はテレビ画面や銀幕に映る、二次元の薄い存在ではございませんのですが、そのあたりはよろしくって?
ふうっ、いたし方ございませんわ。
えっ、大丈夫? 皆さまそれぞれ腕に自信あり?
まあ、それを先に仰ってくださいな。ちょっと安堵。
こちらのおじいさまは、有段者?
まあっ、六段でいらっしゃいますの!
それは講道館柔道、もしくは極真空手の達人でいらっしゃると。
はっ? アマチュア将棋の六段……
縁台に片足立てて団扇片手にお相手してくれる、将棋好きな妖魔が出現した時にでも、お願いいたしますわ。
ええっ、囲碁でも、オセロでも、なんなら人生ゲームも用意いたしますわね!
勇ましく手を上げていらっしゃる、そちららのおじいさまは?
現在はその世界から足を洗っているけど、若い頃は日本刀片手に大暴れされたと。
まあ、頼もしや!
ただ現在は神経痛がひどく、杖をつかないとお歩きになれない、とのことでございますわね。
どうぞお気持ちだけ、わたくし承りとうございます。
お大事になさってくださいまし。
日本刀も今では杖替わり。とても振り回せませんわね。
おばあさま、先ほどからヒュンッ! ヒュンッ! と空気を裂く鋭い音を耳にいたしますのですが、それは鞭か、はたまた投げ縄ですの?
ええ、もちろん武器は必要……って
申し訳ございません、その手に持たれた蠅叩きで潰せる相手ならよいのですが。
もう少し大きゅうございますのよ、妖魔って。
それにお腰に付けた蠅取り紙では、かなり無理があるかと。
あらっ、あちらで鋭い気合を発しながら、薙刀で演武されてるおばあさま!
わたくしから見ましても、あのおかたなら一騎当千のご活躍……
はい? 敵味方の区別がつかない?
人に見えるモノが見えなくて、人に見えないモノが見える?
今も、あのおばあさまにしか見えない悪漢と、真剣勝負されておいでだと、そうおっしゃいましたかしら?
ああっ! 危ない! 皆さま離れて!
わたくし頭痛などとは無縁の人生でございましたが、なにやら百キロくらいの重石を頭頂部に乗せているような感覚でございます。
えっ?
去年は頼みもしない謎の怪人が現れて、妖魔を退治してくれたから、今年も勝手にやってくれるだろう、とおっしゃいましたかしら?
赤い安全ヘルメットに、赤いスクール水着、赤い長靴を履いた、いかにもアブナい、近寄ったら何をされるかわからない怪人が、妖魔を掃討するところを見た、と。
だから今年も任せよう、ということでしょうか。
さ、さようでございますか。ついぞ知りませなんだ、ですわ。
そのう、赤い? 怪人?
多分そのコスチュームは、スクール水着に長靴ではないと、い、いえいえ、わたくしの勝手な推論でございますが。
わかりました、わかりました。はい、はいはい。
そのアブナイ赤い怪人にお任せいたしましょう。
どっと疲れたわたくしは、テーブルに置かれた湯呑茶碗から、生ぬるいお番茶をいただきながらカクヨムさまをチェック。
まあ! 拙作「猟奇なドール」に燦然と輝くお★さまが!
一気に疲れが吹き飛びましたわ!
盟友 藤田アシシさま、
スリーアローズさま、
白里りこさま、
貴重なお時間を費やしていただき、誠にありがとうございます!
つばきは、おばあさまの薙刀をヒラリとかわしながら、御礼申し上げる次第であります♡