• 異世界ファンタジー
  • 詩・童話・その他

嗚呼、頭痛 & 「いつか誇れるあなたへ」こぼれ話(マジェルジェのカバートアグレッションの話)


 おのれ低気圧! おのれ頭痛!

 寒暖の差、気圧の差激しい昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか?
 僕は頭痛に襲われ腹を下し、痔によって便器を赤くしています……というか、頭痛の時のお手洗いきっつい……

 皆々様、心の隙間は寒さからもやってきますので、温かい物を食べて、よく寝て、健康に気を使ってください。
 僕はベッドの上で作品の構想練り練りして寝落ち……瞑想に励んでおります(



 さて、毎日連載のはずが気が付けば不定期連載になってしまっている拙作「いつか誇れるあなたへ」ですが、実を言うとちょっと悩んでおります。
 何に悩んでいるかというと、何を隠そう件の拙作は実際にある精神心理学のことを扱っていたりします。
 というわけで、ちょっと難しい話を、長々としますよ~


 マジェルジェのような「他人を操作して他者を貶めようとする人」「善人のふりして他者を攻撃する人」を心理学では「カバートアグレッション」と呼びます。
 マジェルジェはユウデンを自身の遠隔攻撃装置に仕立て上げ、気に入らない相手、フヨルを攻撃します。その心理の根底にあるのは「自信の無さ」です。自信が無いので、「自分より劣ってるなと判断した相手をなんとかこき下ろしたい」という心理が働くのです。
 とはいえ、ここまでならマジェルジェのような人以外でも抱く心理です。すなわち、嫉妬……羨ましいという感情ですね。
 そもそも、マジェルジェがフヨルに嫉妬した理由は何かと言えば「昔自分を酷い目に合わせていた人に今の自分は怒りをぶつけられないので、代わりに憂さ晴らしのため『甘えている』」のです。カバートアグレッションの動機は他にも「自分の劣っている場面を相手に見出したが自分を否定できないので、代わりに否定したい」などもありますが、だいたいの場合は理不尽です。なんだったら、カバートアグレッションを行ってる者もその自覚が発生することがあります。
 しかし、カバートアグレッションを行う人は総じて「自分が悪い」ということが認められません。反省しても「じゃあどこまでなら、悪いこととしてみなされずに許されるの?」ということを言いがちです。あるいは「他の人もやってるんだから自分だけ罰されるのはおかしい」などですね。そこで、マジェルジェはフヨルの(フヨルにかぶせた他人の)悪性をみんなに公開しようとします。そりゃマジェルジェの中ではフヨルは「昔私を苦しめた相手」とイコールなので「絶対に謝ったりなんかしない」はずでした。ところが、フヨルは謝ります。当たり前です。マジェルジェが怒ってる人とは他人なんだから。

 そこで謝ってもらった結果、多くの人は「じゃあ次から気を付けろよ」で終わりますが、この手のタイプは違います。例えば、いじめっ子が何故いじめを止められないかというと「脳内で麻薬が出ていてその中毒になるから」です。このタイプの人は「暴力を振るっても自分が許された」ということに着目し、ゆがんだ形で自己肯定感を高める方法を覚えるからです。「もう一度殴って認めてもらいたい!」
 ましてマジェルジェの場合は「『昔私を苦しめたあいつは謝らないということを証明してみせる自分が正しい』はずなのにあいつはすぐに謝って私の顔に泥を塗った」という悔しさも加わりました。謝ったらダメなタイプの人というのは世の中に残念ながら存在します。マジェルジェはそもそも、フヨルに怒っているのではなかったので、フヨルはマジェルジェに昔酷いことをした人たちを演じつつ話を聞き頃合いを見計らって謝るという、カウンセリングの専門技能が必要だったわけで……できるかそんなもん!

 マジェルジェの場合は更にユウデンがその性格の加速役として機能していました。ユウデンはいわば、マジェルジェの遠隔攻撃装置であり自己肯定感をアゲてくれる“玩具”です。
 ユウデンは反射的に「そうだな」という返事をしがちです。それそのものは悪いことではありません。反射的に「いや」という否定の返事をするタイプよりはいくらか人間関係を円滑に進められますので、僕個人としてもおススメです。が、マジェルジェのようなタイプの人には駄目です。
 今回の場合、マジェルジェがフヨルを攻撃する意見を言った時にユウデンは「そうだな」と肯定していたのです。するとマジェルジェはこう思ったはずです。「ユウデンは私の配下だ」味方だと思わないところがミソです。
 ユウデンの方はユウデンの方で「マジェルジェの愚痴などを聞いて居れば周囲には被害は出さないだろう」ぐらいに思っていたのかもしれませんが、これはカバートアグレッションの遠隔装置に仕立て上げられる危険な行動です。まして、他者を殴る悦に浸るとそこから抜け出すのは簡単ではありません。マジェルジェのためにもやめておくべきことでした。

 「悪い人と付き合ってるんだからあの人も悪い人じゃないか。類は友を呼ぶというし」というのは残念ながらほぼほぼ正しいです。
 というのも、カバートアグレッションの人と接し、彼らの意見に常日頃賛同していると(ふりであっても)、彼らの意見に呑まれていきます。ユウデンはまだそうではありませんでしたが、現実にユウデンと同じ立場の人がいた場合、着実にフヨルが悪い人に見えて来るでしょう。フヨルの一挙一動に、マジェルジェと同じように目くじらを立て始めてしまいます。二人の間でフヨルの立場の人を責めることが人気のトレンドになっている場合、とても危険な状態です。
 何故かというと、カバートアグレッションの人と接していると非常に疲れてしまうからです。誰かの悪いところや気に入らないところで盛り上がることは、最初こそ大丈夫でしょうが、次第に精神的に疲弊し、そのうち肉体的にも疲弊してきます。まして周囲からは「ユウデンはマジェルジェと仲が良いのだから、ユウデンもマジェルジェの同族だろう。近づかないでおこう」となります。ユウデンからは知らず知らず人が離れていくことになります。それがさらに精神的な疲労を加速させ、ついにはカバートアグレッションを行っている者の遠隔攻撃装置になってしまいます。なぜなら、カバートアグレッションを行う人は離れていかないからです。スピリチュアルではこういう人をエナジーヴァンプなどと呼ぶそうです。エナジーヴァンプだけが脳内麻薬でハッピーになる関係です。

 何故カバートアグレッションを行う人は離れないのか、理由は簡単です。「自己肯定感をアゲる玩具だから」です。
 カバートアグレッションを行う人とその遠隔攻撃装置にされている人は、だいたいの場合深い関係であることが多いです。親友、あるいは恋人や伴侶。カバートアグレッションの遠隔攻撃装置にされる人は、元は善人で純情である人が多いようです。善人で純情であるが故に、悪人に良いように呑まれるのです。カバートアグレッションを行っていると解っていても離れられないケースすらあるように、善人故に付け込まれるのです。
 一番簡単にカバートアグレッションを行う人が遠隔攻撃装置を繋ぎとめる方法があります。セックスです(どーん)
 善人で純情な人はセックスを「ダイヤモンドの結婚指輪」だと思います。
 しかしカバートアグレッションを行う人はセックスを「高級フレンチ」や「ゴディ◯のチョコレート」ぐらいの価値観でしかありません。ユウデンより自己肯定感を満足させてくれる人を見つけたら、今度はユウデンが攻撃対象になります。「私、ユウデンに乱暴されてたの!」
 カバートアグレッションを行う人はそもそも「悪事を働いても自分が許される」という発想の人です。「『悪いことをしても許される自分』という脳内麻薬に酔っている人」なので遠隔攻撃装置からの愛は届きません。彼らは遠隔攻撃装置を愛しているのではなく、自分を愛しているのです。ですが、遠隔攻撃装置は思う事でしょう。「結婚相手は俺が守らなきゃ!」肉体関係がありながら片思いとか、そら精神的に壊れるに決まってる。
 作中のユウデンの場合は勇者として「頼られる自分」を作り上げる事で自身を保っているタイプですので、マジェルジェがしおらしく善人の被害者のふりをすれば、守らずに居られません。一緒にフヨルを責めずに居られません。二人の間に肉体関係があるかは作者も未定です……薄い同人誌にしてください(
 そうして、遠隔攻撃装置が“ご主人様”の愛に餓えれば餓えるほど、遠隔攻撃装置の性格は歪み、攻撃性は増し、人は離れ、体調は心身ともに悪化し、人生が破壊されます。“ご主人様”はその頃には、新しい遠隔攻撃装置と一緒に古い玩具を攻撃しているでしょうが……



 で、ですね……悩んでいるんですよ。

 ユウデンを助けるにはどないしたらええやろか

 フヨルが主人公であれば簡単です。二人を切り落として終了です。
 しかし今回の話はユウデンが主人公です。ええ、ユウデン自身、問題のある性格として作りましたので、そこが尾を引いております。
 そもそも、作中のような状態になるには条件がありまして、「マジェルジェが自己肯定感を『他者を攻撃すること』でしか満たせないタイプの悪人」であることはもちろん「ユウデンがプライドが高くて『自分の失敗を恐れる』『謝ることができない』人」であることです。どちらも「自分が危うくなると『被害者の悪いところを探す』ことで安心感を得る」という、周囲にとっても危険な性格です。
 ユウデンのようなタイプの人はまだ何とかなります。『大事な一言』の力を信じれば良いのですから。もちろん、その一言を格好つけていうには簡単ですが、心の底から真摯に言うには身を割くほどの力が必要になります。あとは、マジェルジェの本性に“自力で”気付くことです。“自力で”気付かねばなりません。大事なので二回(ry
 想像に難しくありませんが、ユウデンにマジェルジェがカバートアグレッションであると告げた場合、ユウデンは意固地になるでしょう。「俺が守らなきゃならないから!」と。フヨルの立場からはマジェルジェの本質は見え透いていますが、フヨルから告げたのでは“ただの悪口にしか見えない”ので逆効果です。ユウデン破滅RTAで使われる裏技です。
 では自力で気付けるか……

 無理じゃね??
 そもそも、自力で気付けるなら遠隔攻撃装置になどなっていません。
 しかし、ユウデンが助かるには、自力で「マジェルジェに自分が支配されている」ことに気付かねばなりません。
 この、矛盾を如何にするか……案はいくつかありますが、さてどうしたものか……どれが一番しっくりくるか……せっかくなら、ユウデンにはカッコいい方法を取ってほしいですね。


 とまぁ、長く難しい話をしてしまいました。
 是非、カバートアグレッションについてはご自分でも調べてみてください。

 僕はまずは……頭痛と戦います……










 ところで、ここまで書けるなら、頭痛薬と一緒に更新できたのでは?
 などと言ってはいけません。ええ、いけません。やめろくださいしんでしまいます。

1件のコメント

  • 過去の私へ

    それはカバートアグレッション、隠れて攻撃性というより
    マニュピレーション、他者を操ろうとするタイプの人
    という方が正しいんじゃないかな?

    かしこ
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する