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【設定語り】《諸王立冒険者連盟機構》の階位制度に関して追記

設定語りの時間だよ! オラァ!(挨拶


新作、「くすんだ銀の英雄譚」でようやく冒険者が物語のメインオブメインとなり、冒険者の階位制度によく触れるようになったので。

ちょっと補足的に、本編中では触れられない(触れるきっかけがない)階位制度の設定を追記したいなぁ……という主旨です。

需要はないでしょうけどそれはそれとして。
自分に対するメモ書きの意味も込めて、ゆきます。



さて。
《諸王立冒険者連盟機構》の階位制度ですが、世界観が同じでも《大陸》側と《多島海》側ではちょっと扱いが違うところがあります。

一言で言い表すなら、「身分保証書」と「勲章」の違い、ということになるかなぁ……という塩梅です。
訳わからん、と言われそうですが。

描写上でもこの辺りは、《大陸》側の物語と《多島海》側の物語とで差があります。
具体的には、↓みたいな感じです。


「機甲少女」の場合--------------------

 車輪に二枚の翼を重ねた《諸王立冒険者連盟機構》の紋章に、加護の法術を封じた銀星晶(ステアライト)をあしらったバッジ。
 それは、《諸王立冒険者連盟機構》から正式に認められた冒険者たるを示す証である。

 もっとも階位の低い青銅(ブロンズ)にはじまり、銅(カッパー)・(銀シルバー)・水銀(マーキュリー)・(金ゴールド)・白金(プラチナ)・琥珀(アンバー)・翡翠(ジェイド)・聖霊銀(ミスリル)の九階位。

 そして、大いなる偉業を成し遂げ遥か戴きへ至った冒険者達は、虹の輝きを宿す輝虹晶(セライリス)の紋章を以て讃えられ、連盟において永久(とわ)にその名を記録される栄誉にあずかることとなる。

「あの、でも……これ、何のバッジなんですか?」

 エイミーが不思議そうに首をかしげる。七つおさまった紋章は、冒険者としての身分を示す十の紋章のいずれとも違う。白っぽい何かでできている。
 よくよく見れば、紋章に嵌った宝石も銀星晶(ステアライト)ではない。薄青く澄んだ藍玉(アクアマリン)だ。

「象牙(アイボリー)の紋章。冒険者ならざる人々が、その勇気を奮ってひとかどの冒険を成し遂げたとき――その偉大なる足跡を讃えるための紋章だ」

「107.epilogue:たったひとつじゃない《ほんとうのこと》【前編】」より
https://kakuyomu.jp/works/16817139558574088770/episodes/16817330658056157711
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「フィギュア」の場合------------------

「冒険者はね、実績に応じて階位ランク分けがされてるの。冒険者になりたての青銅(ブロンズ)が一番下で、そこから順に銅(カッパー)・銀(シルバー)・水銀(マーキュリー)・金(ゴールド)・白金(プラチナ)・琥珀(アンバー)・翡翠(ジェイド)――そして一番上に聖霊銀(ミスリル)で、九階位」


 ランバルドは金階位(ゴールド)だと、先程セリアは言っていた。
 九階位の真ん中――中堅といったところか。

 成程、と頷くウォルフを横目に見遣りながら、どういう訳か、セリアがちいさく含み笑う。


(※中略)


「金階位(ゴールド)ともなれば押しも押されぬベテラン、一級の実力者よ。名前だって知られるようになるし……拠点(ホーム)あたりの名前が売れてるところなら、それこそ待ってるだけで向こうから仕事が来るくらいのね。
 その中でも一握り、特別に『これぞ』という功績を認められた、限られた冒険者だけが、白金(プラチナ)の階位まで昇れるの」

「57.暗夜行路:ランバルド・ゼオン①」
https://kakuyomu.jp/works/16817330648210782620/episodes/16817330660521620804
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「くすんだ銀の英雄譚」の場合----------

 かつて、東方の《多島海(アースシー)》から《諸王立冒険者連盟機構》という組織システムが伝来した頃には、こうした等級の仕組みはなかったそうである。

 しかし、《大陸》という大地は広大だ。
 ある土地では押しも押されもせぬ大英雄として名を馳せた傑物が、よその土地に移った途端まったくの無名として冷遇、嘲弄されるといった不幸な事故は、枚挙に暇いとまがなかった。
 そうした――双方にとって不幸そのものでしかない事故を未然に防ぐべく導入されたのが、現在の階位(クラス)制度であるのだそうだ。

 冒険者になりたての青銅(ブロンズ)が一番下。
 そこから順に銅(カッパー)・銀(シルバー)・水銀(マーキュリー)・金(ゴールド)・白金(プラチナ)・琥珀(アンバー)・翡翠(ジェイド)――そして最上位たる聖霊銀(ミスリル)の九階位。

 もっとも、九階位とは言っても琥珀(アンバー)より上は、伝承として吟遊詩人たちに歌い継がれる英雄・英傑の領域にある。金(ゴールド)まで昇り詰めれば紛れもない一流。白金(プラチナ)階位ともなれば、冒険者たらんと志す者が仰ぐ頂(いただき)の域だ。

「05.うらぶれもののおっさんは、ちょっとしたことですぐに落ち込んでしまう生き物なのだということ」
https://kakuyomu.jp/works/16817330663385552023/episodes/16817330666288692885
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――大きな違いとして。
《多島海》側(「機甲少女」)で存在した「輝虹晶(セライリス)の紋章」に関する記述が、《大陸》側(「フィギュア」「銀の英雄譚」)ではありません。

「銀の英雄譚」で触れたとおり、《多島海》にその端を発する《諸王立冒険者連盟機構》が大陸へ伝来した時には、階位制度は存在しなかった、という設定です。
これに対し、《大陸》の広大さを踏まえて冒険者の実力を分かりやすく示す指標として導入されたのが階位制度である、と言うのがおおよその設定です。

この制度、設立当初は青銅~白金までの「六階位」でした。
ただ、やがて「白金」の中に抜きんでて優れたものが現れ――おなじ「白金」の中でも冒険者の、ないしパーティの力に懸絶した差が見られるといったケースが見られるようになったことから、大陸に伝わる魔王討伐の伝承、《翡翠の剣と琥珀の剣の勇者》の伝説になぞらえて、「琥珀」「翡翠」「聖霊銀」のみっつの階位が増設されました。
「白金」でおさまりきらない冒険者をさらに上位の――半ば名誉称号というべき――階位として区分けしたのです。

余談ながら、この勇者の伝承というのは以下のようなものです。

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 神代の終わり、人の世の黎明の時代――創世の神々が果てなる異世界へと去り、今の『人間』が、《真人》に代わり世界へ広がる新たな人類となった時代のことである。

 大陸の中心――今は巨大な洞(うろ)と化したる霊峰ミスグラウムの頂において異世界へ続く《奈落の虚門(アビスゲート)》が開き、その深奥よりひとりの魔王が世界に姿を現した。

 異界より現れし魔王、《第一の魔王》である。

 常闇の異世界より来たれる魔王は光り輝く新世界を手中におさめんと欲し、彼方なる闇の底よりこの世界へと溢れ出したる己が眷属、《魔族》どもを地へ放ち――創世の守り手たる神々去りしこの世界は、瞬く間に恐怖と破壊、終わりなき混沌に包まれた。

 町は焼け、人は死んだ。
 文明の黎明なるこの時代、圧倒的な魔の力を振るう魔族に対して人々はあまりに無力だったのだ。

 だが――もはやこの世の終焉と思われたその暗黒の時代に、一人の勇者が現れた。

 人の身を得てこの世に生まれ変わった、名もなき一柱の神――右手に翡翠の剣、左手に琥珀の剣を携えた彼は、数多なる魔族と魔を統べる魔王をたった一人で撃ち滅ぼし、黎明の時代を護りし救世の《勇者》となった。

(※中略)

 ――かつて、伝説の勇者イルダーナフは、異界より顕れし《第一の魔王》を討ち倒した。
 育ての二親たる妖精がその身を変じた討滅の刃、《翡翠の剣》と《琥珀の剣》の一対をその引き換えとして。

 砕け折れたるふたつの霊剣――育ての二親たる妖精を喪い、勇者はその犠牲を深く嘆き悲しんだ。
 神々はその姿を哀れに思い、遠き彼方の異世界よりその御手を伸ばしてふたりの妖精、死にゆくその魂を救い上げた。そして、その存在の《根源》たる討魔の力を、勇者が護った世界へ永遠に縫い留めたのだという。

 世界に縫い留められた討魔の力――その顕現こそが、《精霊銀(ミスリル)》であるという。
 精霊銀が魔を討つ力を宿すのは、それがかの妖精たちの変じた欠片かけらであるからなのだと。いにしえの物語はそう伝えている。

機甲少女「117.《師匠》が来た日。【後編】」より
https://kakuyomu.jp/works/16817139558574088770/episodes/16817330660082928108
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《白金》の上が「琥珀」「翡翠」「聖霊銀」なのは、この伝承に基づくがゆえ、という設定でした。


で。
階位制度が《多島海》へ逆輸入されたのは、この九階位制度が成立した頃になってからでした。

もともと《多島海》では、「支部まで行けば冒険者の過去の実績が分かる」程度には記録の共有化が進んでいたのに加え、第一に《大陸》ほど広大な土地でもなかったことから、「力量や実績の指標」としての階位制度はそもそも需要の薄いものでした。
階位制度はあくまで、《大陸》の広さを踏まえて要請された制度だったということです。

ただ、《大陸》側のネットワークが広大化し、《諸王立冒険者連盟機構》全体として規格の統一が要請されたこと――また、《大陸》から《多島海》へと渡る冒険者が現れるようになり、彼らの実力を分かりやすく把握する指標が必要になったことから、《多島海》でも階位制度の導入に至りました。

しかし、《多島海》側に導入された時点で、追加の事情が発生しました。


《大陸》から多島海へ渡ってきた、いわゆる「大陸冒険者」――彼らは自身の故郷から新天地を求めて渡ってきた冒険者達でしたが、そうしたグループの常として、「故郷にいられなくなったがために新天地へと渡った」はぐれ者、粗暴なアウトローの類が多く含まれていたのですね。
そうしたガラの悪いアウトローは、分かりやすい自身の力と実績の誇示として殊更に階位のバッジを強調し――さらにその一部は、その粗暴にたまりかねた《多島海》の冒険者相手に返り討ちに遭うなどしていた訳です。

少なくとも当時の時点においては、字義上は同じ「一流」でも要請されるレベルに大きな差があったことから、階位が同じでも正面からぶつかれば《多島海》の冒険者が一方的に圧倒してしまう――どころか、一流を名乗ってふんぞり返っていた冒険者が「格下」相手に返り討ちされてしまう、といった事例すら、少なくありませんでした。

こうした初期の不幸ないざこざを経て、《多島海》では「やたらと階位を誇る冒険者は厄介者」――転じて「紋章を誇示するようにいちいちつけ歩く冒険者はダサい」という文化・価値観が形成され、紋章による身分保障そのものが忌避されるようになってしまいました。
紋章を持ち歩き、「遠い土地での自身の力と実績の証明とする」という制度の本旨が、骨抜きのぐだぐだになってしまったのです。
かろうじて、冒険者としての身分保障の役割は残りましたが――遠方で記録の共有化が追いついていないときなど、最新の階位を支部の窓口へ提示することで現在の状況を示す、といった感じでしょうか――対外的に積極的にそれを示すことで冒険者としての「格」を示す指標としての、《大陸》流の用法はすたれました。


では、《多島海》における紋章はどのように扱われているのか。
それは、その冒険者が「何をなしたか」「どの程度のことをなしたか」に応じてそれを賞される、「勲章」です。


冒険者として「階位相当の実績」を果たしたという、功績を讃える勲章ないし表彰状的な位置づけとして用いられ、認識されるようになったのですね。「あなたは冒険者として素晴らしい功績を残したことをここに賞します」――という感じです。
でもって、全体のニュアンスとしては、

「勲章を持ってるやつはすごい。けど、いっつも勲章をジャラジャラつけ歩いて偉ぶってるやつには辟易するよね!」

――といった扱いに落ち着いたのです。

この段に至って、「冒険者間での指標」としての階位制度は、《多島海》ではほぼ意味をなさなくなりました。

紋章の扱いも《大陸》のそれとは変わり、《大陸》では階位の変動・更新のたびに古いものを返納する扱いとなっている紋章が、《多島海》では任意の返納で、基本的にすべて冒険者の側に渡されっぱなし――という扱いになっています。
バッジに「勲章」のニュアンスがあるからですね。「これまでで一番の実績」を示すニュアンスが付随しているため、過去に獲得した紋章をずっと手元に置いておきたいという冒険者が大勢いたのです。

そして、ここからさらに進んで、

九階位でもおさまりきらない実績を積んでしまった冒険者に対する、さらなる名誉称号としての「輝虹晶(セライリス)」
冒険者ならざる人々が、その勇気を奮ってひとかどの冒険を成し遂げたことを讃える純粋な『勲章』としての「象牙(アイボリー)」

――といった、「階位の管理外」にあるバッジが新設、運用されるようにもなりました。
これも、紋章の扱いが「勲章」に近しいがゆえの拡張といったところです。



――と。いった感じの設定であると、現在のところはしています。
またいずれ追記されたりこっそり変わったりするところがあるかもしれませんが、現在はこんな感じの想定なのでした。

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