• 異世界ファンタジー
  • 恋愛

【雑記・キャラ語り】シド・バレンス編【くすんだ銀の英雄譚】

カクヨムコン9に投稿した新作について、ちょっと宣伝も兼ねて一度やってみたかった「キャラクター解説」「ライナーズノート」的なやつを書きました。
「こいつはこんな感じでキャラクターを考えてるんだな」的な創作論的読み物として読んでいただければ勿怪の幸い。


楽しんでもらえたら嬉しいです(挨拶
評判悪かったら消すと思います(挨拶


――では、今回は主人公のシドことシド・バレンスについて。


-----------------------------------------------
【シド・バレンス】
・キャラクターのコンセプトは「いぶし銀」。
 兎にも角にも、「おっさん主人公をやってみよう」というところからすべてがスタートしています。

 「おっさん主人公ならやっぱいぶし銀の魅力でしょ!! 書けるかどうかは、まあ、わかんないけど!!!」。以上。

 当初は渋いおっさん路線もルートに入っていたのですが、その線だとペアになる若人ないし若人カップルを主人公に置いた方がポジションとして映えるし私が好きだなぁ…ということで、「ぱっと見はいまいち冴えないおっさんだけど、ほんとは実力者」というよくある感じのやつを骨子にして現状のキャラクターを形成しました。
 もともと「とっぽくておっとりした兄ちゃんだけど実はすごい実力者」みたいな筋立てが好きなので、その拡張系です。

・子供、青年、おっさんときていますが、次があってもじいさん主人公になることはなく、少年か青年あたりに戻るだろうと思います。

・外観はひょろっとしてとっぽいおじさんのイメージ。
 逞しくしてしまうと「頼もしい」「頼りがいがある」イメージが強く前面に出てしまうと感じたため、うらぶれもののおっさんには相応しくないな――ということで、ひょろっとした感じの設定にしました。

・没個性となりかねない、埋もれかねないのは織り込んだうえで、自分的になるべく「雑味のない」主人公を目指しました。

 目立ちたくない訳ではない、活躍や栄達を忌避している訳でもない、チャンスがあればそういうのにも一度手を伸ばしてみたいけど、ただ当人の性格と周囲の状況からそうする機会を逸し続けたひと。ありふれた「普通」のひと。
 そうして生きてきた現状に後悔しているわけではないけれど、それでも冒険者としてくすぶり続けている自分に忸怩たるものを感じてはいる、そんなひと。

 私的なアレですが、『目立ちたくないんだけど、でも凄すぎるせいで目立っちゃう』が前面に出た筋立てだと、シドのキャラクターでやった際かなりキャラクターの骨子とぶつかるというか、ノイズがきっつくなる気がしています。
 いえ、まったく目立てないとそれはそれで困るんですが……主人公的に。

・『誰か』に順番を譲り続けてきた、心優しく優柔不断で、踏み切る一歩を踏み切れないひとに訪れた、遅れながらの晴れ舞台。
 まだ『手遅れ』ではないはずだから、たとえ怖気ながらでも冒険に出てみよう――と。

 「セカンドライフ」という体裁を踏まえて、そんな感じのイメージでキャラクターを詰めました。

・セカンドライフが主体とはいえ、ファーストライフを『どん底』にしてしまうと書いてて私がつらいので、周囲の人間関係はだいぶん優しくしました。これは趣味が分かれるところで、どん底からハッピーライフに成り上がる方が好きと言う方も多くいらっしゃるとは思いますし、単に私がそういうの書けないだけですね。
 拙作「魔女の花嫁」の時も、幼馴染との冒険者ファーストライフから結婚してセカンドライフというあんまりギャップのない移行でしたし、こう…「ひっくり返す前提の不幸パート」と、そのための胃が痛い人間関係が、書いててしんどいのかなぁと自己解釈してます。

・これは完全に個人的なアレなんですが、同じ「どん底」なら、私的にはウォルフみたいなどん底の方が書いてて楽しい。
 本作とは特に関係ないアレですが、あいつにはまだまだ落とせる底があるって信じてます。
 そのために、ちまちま伏せ札も用意してます。
 くふふ。

・ともあれ上記の結果、結果的に周囲へ「いい子」を周りに揃える形となったので、主人公周辺のキャラクターがたいへん私の性癖、ないし好みに落ち着いています。これはいつものことといえばそうですが。
 というより、主人公周りへ明確に「嫌なやつ」を置いた話、今までこれといって書いてないよなぁという気がしています…

・外観上のモチーフは特になし。
 印象としてだぶるところはあまりないと信じたいですが、「片田舎のおっさん剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~」の主人公、ベリル・ガーデナント氏が直近で観測したおっさん主人公の中で特に、「一見くたびれているけどかっこいい、さらに性格も優しい」好きな感じのおっさんキャラクターだったので、路線としてはそういう方向性を志したいなぁと思っています。

 将来的に大成するかは、ちょっとわかんないんですけどね。積極的に引き上げようとしてくれる弟子ポジがこれといっていないですし。今のところ。

 ただ、本作だと実績・強さの指標としての『階位』を設定として出してしまったせいで、下手に成り上がらせると階位がぐいぐい上がってしまって、なんかこれはこれで面白くないな――という背反を当初から抱えてしまってもいます。
 これは設定のミスかもしれません。

・周囲の人間関係は、拙作よりシオン・ウィナザードの変奏。
 よくも悪しくも周りからはアテにされてるし慕われてる。特に『子供』から好かれるのはマストです。

 ただ、割と『恋愛』的なニュアンスで年少の女の子から慕わせてるシオンと異なり、こちらは『父性』『懐かれてるおじさん』としてパラメータを振ったつもりです。印象がだいぶん違うと思います。

 シドに対するターニャの立ち振る舞いは、こうしたパラメータ構成を踏まえてのもの。
 ニュアンスが伝わるといいのですが、このキャラクター構成で「光源氏をやらせる」つもりはないのです。

・実のところ、父性キャラはこれまで書いたことがない訳でもないのですが、そちらとは印象がだいぶん変わったので新鮮な気分です。以前のは「血縁のない父親」的なニュアンスだったせいかも。
 そも、私が書く「年長の主人公」はだいたい子供に好かれる設定がくっついてる気がしますけど。分かりやすさが過ぎます。

・「いまいち報われてないけれど、周囲の人間関係は良好に留めたい」、という自分の好みから逆算する形で、当人の性格や冒頭の流れを構成しています。まず、慕われてるなら慕われているだけのバックボーンが欲しい。

 「人の幸福を喜べるひと」。

 こう書くと陳腐ですが、現実的にはとても得難い資質であると思います。
 これを踏まえて、一話のパーティ解散~二話前半は「どうやって『事故』に仕立てるか」というのを念頭に、エピソードと周辺のキャラクター設定を組みました。

・上記の方針に絡むところなのですが、周りが女の子ばかりだと「いやこれ性欲だろ?」とツッコミが入りかねないというのは念頭にありました。
 なので、冒頭の時点ではシドを慕ってくれる、好ましく思ってくれるキャラで固めたうえで、雰囲気が「恋愛」っぽくなるキャラは出さない、ないし数を抑えるというのを意識していました。

 バートラドとフローラが夫婦なのは、そういう主旨に基づくものでした。
 アレンとミリーの年少組がちょっといい雰囲気なのは、書いてるうちに何だかそういうことになったものです。いえ、これはほんとに。
 アレンがミリーの留学に同行する設定なんて、書き始めの段階ではカケラもなかったやつです。おかげであの二人の離脱がセットみたいになっちゃったし、唐突な甘酸っぱさ以外は何もいいことがない!

 実のところ、フィオレの役割は「パーティ全体の冒険の動機」兼「数合わせ」。最終的な離脱が「バートラド、フローラ組」「アレン」「ミリー」の3組――しかも、執筆時の勢いで2組に減った――では、いまいち「事故」感が足りないなぁと思ったのを踏まえて追加しました。
 最終的に年少組までセットになりやがったのを踏まえると、フィオレを足しておいて本当によかった。
 なお、女子にしたのは「後でヒロインとして引っ張ってこれないかなぁ」みたいな下心もあったせいです。はい。

・正味、せっかくライトノベル風なんだから主人公の周りにヒロインいっぱい出してみたいのですけど、初手でそれをやると「性格のいいひと」というところに雑味が入るな――と。
 この辺、所詮は自分一人の心証・印象に基づくしろものですが、こうした打算はきちんと入れてキャラクターの立ち位置を構成してます。
 なお、フィオレの扱いは今後次第。一応、再登場の予定はあるんですけどね。

・スペック的には、『分かりやすく強い』をコンセプトに武器と戦法をセレクト。
 武器から伺える『強さ』の理由は本編でユーグにつらつら語ってもらいましたが、それはそれとして小器用な戦い方から膂力にものを言わせた一撃必殺まで、『いかなる局面でも強い』のをベテランの強みとして描写したつもりです。
 なまじ相手を気遣ってしまうせいで『嘗めてかかられている』と相手を怒らせてしまう感じだろうなぁ……という個人的なイメージが、序盤の決闘描写の通奏低音になっているのではないかと。

・完全に余談ですが。一日の終わりに「脳内一人反省会」みたいな自己嫌悪を延々してそうですね、このひと。
 ……こういう発想がポンと出てしまうあたり、キャラの骨子はやはり陰キャ寄りっぽいなぁ。このひと。
 「これまでの作品で陽キャがいたか?」というのは、また別の話として。

・実のところ、拳打主体の小器用な戦い方はユイリィで既にやっているんですが、やるキャラクターが変わったのと、あとは『受けて返す』立ち回りになったからか、対ユーグ戦の格闘は、やはりユイリィの戦闘パートとだいぶん印象が変わったと私的には受け止めています。ユイリィの時は基本が小柄で軽い「小兵」なので、志向する立ち回りがスピード感と軽やかさ重視だったんですよね。

 なまじ間合いの長い武器なので、近接戦をガチガチにやれると武器や実戦にこなれてる感がしてかっこいいのではないかなー、と考えつつ、あの辺書いてましたが。さて、どうでしょうか。

・強さの骨子が『チート』『裏技』の類でないのは私的なこだわり。チートが強いのは当たり前だし、さらに言うならそういう裏をかくやりくちは、ビジュアル的に少年少女にやってもらう方がいいんじゃなかろうかというのが個人的な感覚。
 メタ的には「主人公」であるということ自体が既に『チート』なのですが、キャラクターのベースが『ベテラン冒険者』であるのだから、少なくとも得意分野においては真っ当な形で強くしたかったのです。

・それはそれとして、超重武器は浪漫だと思います。
 アックスはちいさくて可憐な女の子が振り回す方が、ソードは強くて渋みのある男が構えた方が絵面的に映えると信じています。

・トータルで見ると「成り上がり系おっさんセカンドライフ」の装丁ではあるのですが、本当に成り上がってしまうとキャラクターのコンセプトが成立しなくなるという困ったアレ。なかなかチャンピオンになれないサトシみたいなアレ。
 さりとて話の都合で成り上がれないのではフラストレーションもいいところでしょうし、うまく落としどころをつけながらやってゆきたいです。

 分かりやすさ重視で導入した「階位」の設定が、話を進める段階で足かせになっているというこの有様よ!

・余談ながら。
 「階位」制度は本作――の、原型――を踏まえて骨子を考えた制度でした。
 本当に、「いまいち冴えないおっさん主人公セカンドライフ成り上がり」みたいなベース部分以外ろくに決まっていなかったくらいの頃だったはず。

 つまるところ、「《機甲少女》」のあの辺の話を書いてた頃には、シドの原型くらいはあったはずです。ランディ達のエピソードを仕立てるにあたって設定を増設したり、実際に「フィギュア」で運用する段になって表に出ていない部分をいじったりした結果が、現状の設定なのでした。

4件のコメント

  • ぉぉおお素晴らしい、たいへんありがたいです、熱愛するお作品理解が深まる👏👏👏👏👏
  • 深いですね〜
    いいですね。こういうの。
    こうやって、あの魅力的なキャラクター達が生まれてくるんですね。
  • >みかぼしさん
    ありがとうございます! 話の進捗に合わせて、こういったよくわかるようなわからないようなものを追加してゆきたいと思います…!

    とはいえ、ここまで長いのはシドが主人公だから、なので、この先はこんな長くなることはないと思いますが。
  • >ふむふむさん
    ありがとうございます…!
    エピソードとキャラクターを並行で考える部分も多いのでこの辺わやくちゃになっているところはありますが、書き口が雑そうな割にこんな感じの事を考えてたりもするんですよ、というお話でした。
    魅力に繋がっていたら嬉しい!
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する