@ericspiraldiverさんからギフトを頂けました!ありがとうございます!
100万文字を超えましたが、まだ応援して下さる方が居て嬉しい限りです。
今回も感謝の即興小説を載せさせて頂きます、時系列は162話の数日後という感じです。
灰川と引き出しの右奥
「ん? なんだっけコレ?」
灰川が事務所で仕事してた時に机の引き出しを開けると、右奥の方に見慣れない物があった。
水色の袋に包まれており、その色を見た瞬間にVtuber北川ミナミの髪の色のライトブルーを思い出す。
「あっ、そういや史菜が引き出しの右奥は1週間見るなって言ってたなぁ」
先日に史菜と一緒に居た時に言われた事で、灰川は色々あってそれを忘れてた。一応はお呪いの一種で中を見ない約束だから、見ない方が良いのかと思いもしたが。
「うん、やっぱ無理、ガマンできねぇわ」
あっさりと見る事に決めてしまい、袋を手に取った。このお呪いは霊的な効果は見込めない事も説明してあるし、なぜ効果がるのかも説明してるから見たって問題ない。
灰川は史菜が自分に好意を向けてくれてる事は知ってるし、これはある意味では『見て欲しい』と言われてるようなものだ!そう都合よく解釈して袋を開けると、中に入ってたのは……。
「バーコードの束? え?なにこれ…」
出て来たのは北川ミナミとも白百合史菜ともイメージが合わない、バーコードシールの束だった。
何だコレ?と思いつつも、灰川が史菜に教えたお呪いの内容は『私物を相手の机の中に隠して1週間バレない』だったから、即席で用意できたものがコレだったんだろうと思う事にした。
「こんにちは灰川さん、お邪魔させて頂きますね」
「おう史菜、テキトーにくつろいでくれ」
そうこうしてる内に史菜がハッピーリレーでの用事を済ませてやって来て、一応は秘密にしておこうと思ったから灰川から机の中を見たとは言いださない。
「そういえば灰川さん、明後日で一緒にお出掛けしてから1週間ですねっ」
「そういやそうだなぁ、あの時はご馳走様だったな、ありがとう」
「いえ、どういたしましてっ、それで、その…あの時は、面白いお呪いなども教えて頂き、ありがとうございましたっ」
史菜は結構な思わせぶりで、この前の事やお呪いの事を口に出す。ここはやっぱり灰川としても、好奇心で見ちゃったよと言うのが正解だと判断した。
しかしただ見たと言うのも面白くないし、少しこちらも思わせぶりに言ってみようなんてイタズラ心が湧いてきた。
「そういや引き出しの中に見覚えのない袋が入っててな~、ちょっと中を見てみたんだよ」
「~~! ぁぅぅ…え、えっとっ…、よ、喜んでっ…いただけたでしょうかっ…?」
こんな事を言うと史菜は顔が真っ赤になり、凄く恥ずかしそうな表情になった。
普段は清楚で落ち着いた雰囲気の子だが、灰川に対しては大胆になったり、こんな表情を見せてくれるのは可愛いと思う。しかしバーコードで何故に照れる?
「お、おう、嬉しかったぞ」
「~~!! そ、そうですかっ、良かったですっ。そのっ…が、がんばった甲斐がありましたっ。えへへ…っ」
バーコードの束で何をそんなに照れてるのか、頑張ったというのはバレずに机に入れたのを指してるのか、なんだかよく分からない。
「灰川さんはっ…、その…お、女の子からっ…私みたいな子からでも、ああいう物をもらったら…やっぱり嬉しいでしょうかっ…? ぅぅ…」
さっきより史菜の顔が赤くなり、灰川としては意味が分からない。あのバーコードの束の中に何かあったのか?とか思うが、変な所はなかった。中身も全部とも普通のバーコードシールだった。
「え…あ、おう…、まあ…嬉しいかな…、うん」
「~! じゃあ今度はそのっ…も、もっとすごいのをっ…、ぁぅぅ…」
もっと凄いの?デカいバーコードシールとか?正直いらないんだが!使い道ないし!とは言えず、どうしようか迷ってたら思わず口が滑ってしまった。
「あのバーコード束は何だったんだ……」
「えっ?」
「あ、いや……」
口が滑って疑問を口にしてしまい、それが史菜に聞こえてしまった。もはや言い逃れ出来ず、机の中に水色の袋にはバーコードの束が入ってたと正直に言って現物も見せた。
「ば、ばーこーど、ですか? なんでこんな物が…でも袋は確かに私の持ってた袋ですし…、あっ…!」
史菜は記憶を探ると、これに見覚えがあった。それはVフェスの時にハッピーリレーのスタッフから「ごめんミナミちゃん! ちょっとコレ預かってて!」と紙束を渡された後、そのまま忘れてしまってたのだ。
後からそれに気付いて、今度に返そうと思って自分の好きな色のライトブルーの小袋に入れてたのだが、それと同じ袋を灰川へのお呪いにも使用して、引き出しの中に入れる際に取り違えたのだと気付いた。
「ち、違いますっ! これじゃないんですっ! 私がお呪いに使おうとしたのはバーコードの束じゃありません!」
「ええっ? そうだったのか、何か変だと思ったんだよなぁ。本当だったら何を入れようと思ってたん?」
「そ、それは…っ、ぁぅぅ……お顔がすっごく熱いです…っ」
まさかの間違いをしてしまったこと、まさかのバーコードの束だったこと、灰川に喜んでもらい好きになってもらうため本来入れようとしたもの、それらの思いが混ざり合って凄い恥ずかしくなってしまった。
史菜は結構な大体な事をする子であり、高校1年生でありながら最近は色々と調べて、男性が喜んでくれる物やとても強い好意を伝えるためのプレゼントを学んでる。
灰川の引き出しに入れようとした物もその類の物なのだが、ネットで調べた知識であり少し変なサイトも見たため、史菜としては結構な大胆なモノを潜ませたつもりだったのだ。
「そ、そのっ! 今度また別の物でチャレンジします! バーコードの事は忘れて下さいっ!」
「え、いや、そんな無理すんなって、別に史菜からのプレゼントならバーコードの束でも嬉しいからよ」
「そんな訳ないですっ! バーコードをもらって喜ぶ人なんて居ません! でも嬉しいって言ってくれてありがとうございます! 好きです!」
「お、落ち着きなされ史菜!」
「あうう~! 頭の中が混乱でいっぱいですっ、こんどにリベンジしますっ! また来ますのでっ!」
そんな感じで史菜は混乱したまま事務所を飛び出て帰ってしまった。結局は何を入れようとしたのか分からず仕舞いだ。
「まあ良いや、仕事しよっと」
灰川事務所のちょっと騒がしい時間が過ぎ、そのまま少し仕事して帰ったのであった。
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まだ続ける予定ですので、もし良かったらゆっくり読んでってください。