https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093073928405783「……あの、失礼な事をお聞きするのですが、ヤーネルさんを売ったというのは本当ですか?」
「……本当さ。ただ、分かってほしいのは……」
「大丈夫です。全てネストの人のためにやってくれているというのは承知しています」
「……ありがとう」
シュバルツの前で、俺は悲劇のヒーローを気取った。ワイタ―あたりが見たら滑稽だと笑うだろう。俺自身もそう思う。全て自分がやった事、誰に強制されたわけでもない、自身の行動により起きている状況である。誰に責任を被せられるものでもないし、誰かの責任を負っているわけでもない。俺が勝手にやって勝手に苦しんでいるだけだ。くだらない喜劇としては、そこそこのできだが、自分が主役であるという事実に慚愧の念が強くなり意識が内に籠ってしまった。シュバルツが歩を止めた事に気が付いたのは彼の背中にぶつかる手前であった。