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読めない心6

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093073819271597

 死んだほうが楽だな。


 希死念慮。エニスや日本にいた頃にもあったが、ここまでは深くはなかった。ストレスからか味覚に障害が出て何を食べても味がしなくなり、暑さ寒さもぼんやりとしか感じない。自分の外側に薄い膜が張ってあって、感覚が遮断されているような気分が続いていた。

 それでも思考回路だけはしっかりと稼働していたのだから面白い。今、何をすべきで、この後どうなるか。自分の中にフローが組み込まれ、終点までおおよそどれくらいかかるのか計算ができていた。時間はかかったものの、ようやく見え始めた終わり。残された猶予を全て捧げ、計画を遂行していく。俺には、それだけだった。それだけで、一年が経過した。
 身体の変調は悪化していたものの支障はなく、手に入れたネストの整備は順調に完了していった。この整備は外部委託していて、多くがウィルズに支持された企業に発注していたのだが、中には俺が自ら選定した企業もあった。ネオラブルも、その内の一つである。

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