https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093073713579097「ウィルズさん。一つ、ご相談があるのですが」
「なにかな」
「ヤーネルさんが失脚したら、いただきたい物がございます」
「私に用意できる物ならなんだってあげよう」
「占領後放置されている非公式のネストを幾つかください」
「なるほど。それを使って君の王国を作るつもりだね」
「はい」
「しかしねぇ。それは私の管轄外だよ。私は商務省の副局長。期待には応えられそうにない」
「でしたら、私の方も協力は致しかねます」
「……おかしな事を言うね。君はさっき、ヤーネルの不正会計を告白したじゃないか」
「そうですね。貴方しかいない部屋で、貴方に向けて言いました。秘書の方以外、他に誰も聞いていません」
「……」
事実はまだ公になっていない。俺が今回の事をヤーネルに伝えればいくらでも誤魔化しは効く。そして、そうなればヤーネルは二度と尻尾を掴ませはしない。この機会はウィルズにとってまたとないチャンスであり、逃すわけにはいかないのである。難色を示すふりをしていても、必ず要求を呑むという確信があったし、呑ませる手は用意していた。