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読めない心16

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093075270273964


「先の戦争で世界は一度滅びかけてから、改めて全人類が手を取り繁栄の歴史を歩んでいこうと誓った。秩序による平和維持を未来永劫に渡って遵守すると条約に定め、尊い命が犠牲になる事がないよう、各国の協力と理解の下、我々は今日人工惑星に住んでいる。にもかかわらず、また人類滅亡の危機が訪れてしまった。一人の若者が、人口惑星を破壊せんと凶行に及んだのだ。この事件は個人の被害妄想が産んだ悲劇であるが、問題なのは、その被害妄想がどのようにして作られたのかという点だ。事件を起こした張本人、ポール・シュバルツは貧困国の出であった。幼いころから両親を亡くし、路上で生活をする、所謂ストリートチルドレンと呼ばれる存在だ。その中でロンデムに住む人間の豊かさを見て、自身の半生と比較し、歪んだ感情が湧き上がってしまった。貧困が彼を狂わせたのだ。世界は平和になったが、まだ不幸は残っている。今後、第二、第三のシュバルツが生まれる可能性があるという事だ。シュバルツは自らの手記の中で、自分は世界の一部であり、誰も自分を傷つけられないと記している。しかしそれは妄想であり、結果は違った。私は彼を、この手で殺した。銃のトリガーは思いの外軽かったが、人の命を奪ったという事実は想像以上に重かった。それでも、私は彼を殺した事について誤った判断をしたとは思っていない。そうしなければ、人類を、世界を救えなかった。先にも言ったが、世界は、やはり不幸だ。私はその不幸を断つために、全身全霊、全知全能をもって、真の世界平和に貢献していく事をここに宣言する」

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